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第69話
ひと仕事を終えて「やっぱり、形跡無かった」と言って悔しそうに顔を歪めながら俺を見る。
「別にいい。手間取らせて悪かった」
「ううん、俺が勝手にやったことだから。······それより、お前そろそろ本家行かなくていいの?それに······ほら、冴島も」
「本家には行くつもりだけど、秀の事は今はどうでもいい。······あいつに何言われたかは知らねえけど、聞く耳持つなよ」
「······あいつね、俺にサイコパスだって言ってきたよ」
悲しげな笑顔が見えて、秀に酷く腹が立った。
「お前達は高校からの付き合いなんだろ。どうしてそんなに拗れてるんだよ」
「冴島は自分のものを取られるのが嫌いだから、神崎が俺に取られるって思って嫌なんじゃない?」
「······だからってそんな風に言うのはおかしい。秀がそんなことを言うから、俺は立岡の味方をするのに」
煙草を口に咥えると「その匂い甘いよね」と全く関係の無い話を始める。
「そうだな」
「俺はその匂いでお前だってわかるから好きだよ。」
「······俺も好きだ。」
母さんがバニラの香りがする煙草を吸っていたから、真似するようにその香りが仄かにするこれを吸っている。
「ねえねえ、本家行くなら俺も連れてって。それで相良舞と話する」
「若に許可もらえ」
「どうせいいって言うって」
連絡をしないというのは目に見えてわかったかは、俺から若に連絡を入れることにした。
「何するつもりだ」
「えー、お話だよ。何を企んでて、誰から情報を聞き出したのか。」
「話すと思うか?」
「舐めてもらっちゃ困るなぁ。俺だって情報屋だよ?彼女を脅すくらいお手の物ーなんつって」
若に事情を説明するとすぐに許可が下りて、それを伝えると「ね、言ったでしょ」とドヤ顔を決めてくる。
「······もう行く」
「あー!待ってよ!準備するから!」
慌てて支度を始めた立岡に、俺はソファに座りながら、だらしない格好だけどもういいよな······と考えていたのだった。
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