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第74話 冴島side
「よかったんですか······?」
電話を終えて携帯をテーブルに置くと、志乃の帰りを一緒に待っていた梓君が遠慮気味にそう言った。
「話、聞こえちゃって······」
「いいよ、気にしないで。彩葉の事もね。」
「······冴島さんはもっと冷静な人だと思ってた。でも······意外と嫉妬深いんですね」
梓君の言葉は純粋にそう感じたんだろうなと思えるようなものだったけど、俺にとっては不思議でしかない。
「嫉妬深い?俺が?」
「うん。神崎さんのこと、独り占めしたくて仕方がないみたい」
「······そ、うなのかなぁ」
このイライラしてどうしようもない気持ちが嫉妬というものなのか。自分が嫉妬深いと初めて知って、少し気持ち悪くなる。こんなの俺じゃないみたいだ。
「初めて、嫉妬したよ」
「そうなの?俺なんて志乃が取られたらやだなって、いつも女の人とかベタベタする人には嫉妬しちゃうのに」
「梓君の心は素直なんだね。すごくいい事だ」
「それなら、冴島さんもだよ。」
それに苦笑を零して、梓君と2人で早く志乃が帰ってくるように願った。
梓君は純粋に志乃に会いたいからで、俺はただここから逃げたくなったから。
「あ、志乃遅くなっちゃうって······」
「······寂しいよね。困ったな」
「でも冴島さんがいるから大丈夫だよ。それに俺も20歳過ぎてるし!志乃はいつまでも俺を子供扱いするんだ」
「あはは、だって梓君は可愛らしいからね」
こうして笑い会う相手は、梓君には申し訳ないけれど、やっぱり彩葉がいい。
「冴島さん、やっぱり神崎さんに謝った方がいいんじゃない?」
至極真面目な顔でそう言われて、思わず頷いた。でも、携帯を手に取る気にはならない。
「今じゃなくても、神崎さんが帰ってきたら。ね?」
「そうだね」
そうは言ったものの、ちゃんと思ったことを言うってことと、言いすぎたこと謝るってことができるのかなと、不安でしかなかった。
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