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第77話

立岡の家はここから少し離れてる。 あまりにも早く志乃の家を飛び出したから、マンションのエントランスの花壇のレンガの部分に腰を下ろし、彩葉が来るのを待った。 まずは何て言おう。やっぱり、謝るべきだろう。でも······その後は? どれが正解なのかわからない。 他人の事になると考えれるのに、自分の事になった途端これだ。 しばらく考えていたら、結構な時間が経った。やっとでた答えに、不安な気持ちのまま彩葉を待ってると、目の前に止まった1台の車。見たことのあるその車の運転席から、彩葉が降りてくる。 「秀」 「っ、彩葉!」 慌てたように走って彩葉を抱きしめる。考えていた言葉なんかもう頭の中にはなかった。 「よしよし。ほら、冷えるから中入れ」 「彩葉······彩葉、ごめんね、俺······あの、えっと······」 「落ち着けって。まずは中に入る。話はそれから」 促されて車の中に入ると、軽く暖房が聞いていて温かかった。いつの間にか体は冷えていたみたいで、小さくカタカタと震えている。 「これ掛けとけ」 「え······彩葉は?寒くないの?」 着ていたパーカーをくれる。そのパーカーからは彩葉のいい匂いがした。 「いいから。」 「あ、ありがとう······」 「帰ったら温まった方がいい。風呂沸かすからちゃんと浸かれ」 「うん」 暖房の温度をあげてくれた彩葉は、俺がシートベルトを締めたのを確認すると車を発進させる。 「迎えに来てくれて、ありがとう」 「ああ。流石に驚いたからな」 「えっと、あと······ごめんなさい」 「それはもう聞いた。俺はもう気にしてない」 彩葉の横顔を眺める。何度見ても綺麗で、まるで作り物のようだ。 「──······だから、立岡にはまたちゃんと謝っておけよ······おい、聞いてるのか」 「あ、ごめん」 「······立岡には、ちゃんと謝っとけよ。」 「うん」 彩葉の家について、パーカーを片付けた。彩葉はすぐにお風呂を沸かしに行ってくれて、申し訳なく思う。 「もう沸くから、着替え持っていけよ」 「······彩葉」 「何?」 じっと彩葉を見て、それから手を伸ばし抱きしめた。細いのに筋肉もあって逞しい身体。本当に綺麗だと思う。 「一緒に入りたい」 「······は?」 「お願い、一緒に入ろう?」 そう言うとしばらく考えていた彩葉が、ぎこちなく頷いた。 「でも何もするなよ!明日は仕事が······」 「あ、志乃が休みって言ってたよ」 「············」 彩葉は微妙な表情をして、「そうか」と小さく言葉を落とした。

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