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第82話
目を覚ますと腰の違和感が酷かった。
唸りながら体を起こして、隣に空いたスペースを見て少し虚しくなる。
「秀······」
「──あ、彩葉、起きたんだね」
ドアの方を見ると秀が立っていた。その手にはお盆を持っていて、そこには美味そうなご飯があった。
「動くの辛いんじゃないかなって思って、ご飯を持ってきたよ」
「······秀、こっちに来い」
「え?うん。あ、忘れてた。おはよう」
「おはよう」
ベッドの横にある背の低い棚にお盆を置いた秀は、隣に座って俺の頬を撫でる。
「目元赤い······、ごめんね」
「······別に」
そのまま目元にキスされて、飯を食べるように促される。
「食べれるだけでいいからね」
「······病気じゃない」
「わかってる。でもほら、無理させたから」
「自覚があるなら、次からはするなよ」
「······善がってたくせに」
秀を睨みつけて、飯に手をつけた。
温かくて美味い。食べ終わってからの食器の片付けも任せて、ベッドに横になった。
すぐに隣に戻ってきた秀は、俺の腰を撫でて申し訳なさそうな顔をするくせに、どこか満足気だ。
「······なあ、申し訳ないのか、満足してるのか、どっちだよ」
「えっ!?そ、そりゃあ申し訳ないけど······、でも、嬉しくて······。もう1回キスさせて」
「んぶっ!?」
いつもは上手いくせに、こういう時のキスは下手くそだ。もっと優しくしろよ。
「下手くそが」
「······だって、照れるんだもん」
カマトトぶって、少し顔を赤くする。
また睨みつけると苦笑しながら、今度こそ優しいキスをしてきて、それを受け入れた。
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