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第83話

体の違和感がマシになってから風呂に入って、その後立岡に謝るために電話をかけたけれど、一向に出る気配がなく、明日にでも直接会いに行くことにした。 少し嫌な予感がする。本当なら今すぐにでも会いに行くべきなんだろうけど、秀を裏切るような気がして行けない。 「彩葉、シーツ洗うよ」 「うん」 「······立岡、電話に出ないの?」 「ああ。いつもなら出るのに」 「拗ねてるんだよ。」 よくそんなことを言う。じっと秀を見ると「ごめん」と謝ってシーツを取りに寝室に行く。 気になって仕方がない。やっぱり今からでも会いに行くべきか。 そう思っていると、突然携帯が震えた。立岡からの電話だと思って画面を見ると、知らない番号からで、怪しく感じながらも電話に出た。 「はい」 「············神崎、彩葉」 聞いたことのある声。 でも、それが誰かは思い出せない。 誰だと聞こうとした時には電話が切れていて、言葉にできない気持ち悪さを感じ、戻ってきた秀に抱きついた。 「彩葉?」 「······ちょっと、このままでいさせろ」 「うん。手は?繋ぐ?」 「繋がない。」 胸がざわついてる。 焦っている時みたいな感覚。 「彩葉?大丈夫?震えてるよ」 「······大丈夫」 「こっち見て。俺のこと、ちゃんと見て」 ゆっくり顔を上げて秀を見ると、秀は顔を顰めて俺の頬を撫でた。 「どうしたの?何か怖いことがあった?」 「わ、わからない······でも、なんか、不安で」 「······何をして、そうなったの?電話かな?誰から?」 「わからないっ」 額を秀の肩につけて、体が小刻みに震えるのを止めようとゆっくり深呼吸をした。 少し落ち着いて、秀の体に腕を回したまま、ソファに倒れる。俺に覆いかぶさるようになった秀は、困った顔をしていたけれど、俺がキスをすればそれは消えた。 「寝るの?」 「······ああ」 「さっきも寝てたのに」 「だって、暇だから」 狭いソファに二人で寝るのは難しい。手を離すとソファから降りて、薄い掛け布団を取ってきてくれた。 「あんまり寝たら夜寝れないからね、ちょっとしたら起こすよ」 「ん」 目を閉じて、考えないように思考を止める。 少し経って秀に起こされた時には、もう何の不安も心に残っていなかった。

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