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第86話

朝までぐっすり眠った彩葉。 「違和感がすげぇ」 「ごめんね、無理させて」 「別に······。それより、あの······漏らして、悪かった」 「あれは潮だよ。気持ちよくなったから出たんだよ。気にしないで」 顔を赤くして、俯いた彩葉にキスをして濡れた髪を乾かしてあげる。 「眠たい」 「うん、休んでて」 「······お前も、疲れてるのに悪いな」 「疲れてないよ。腰、痛い?マッサージしてあげようか?」 「痛くないから、大丈夫」 髪が乾いて、ワックスで整えてあげる。 顔を上げた彩葉にキスをして、額をコツっと合わせた。 「······何だよ」 「何か、今更だけど青春してる」 「は?俺達もう30なんだぞ?」 「わかってるよ。わかってるけどさぁ······」 俺にとっては初めてなんだもん。彩葉が口元を緩めて笑うから、愛しさが倍増する。 「秀、飯を食いたい」 「あ、忘れてた。すぐ用意するね!」 「うん」 ご飯を用意して彩葉の前に出す。それを彩葉が食べ終わって、時間を見るともう出ないといけない時間らしく、急いで荷物をとって家を出て行く。 「いってらっしゃい!」 「ああ、行ってきます」 そんな何気ない挨拶に胸がほっこりとする。 きっともうすぐ、そんなことを言っていられないようになるんだろうけど、それでも嬉しかった。

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