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第87話
彩葉が仕事に行ってから少し経った。今は午前9時45分。
暇だなぁと思っていると、携帯が鳴って着信を知らせた。相手は志乃で、「どうしたの?」と電話に出ると「神崎は?」と聞かれる。
「え、仕事に行ったけど?」
「······そうか」
「どうかした?何かあったの?」
胸がゾワゾワする。次の志乃の言葉を待つ前に、立ち上がった。
「······神崎が来ていない。」
「は?でも、もう家を出てから1時間は経ったよ?」
「立岡にお前に言われた番号を調べさせた。あれは神崎の父親だ。相良がカラスから神崎の父親のことを聞いたなら、カラスはそいつと繋がっているかもしれない。もしそうなら、危ない」
ガツンと思い切り頭を殴られたような衝撃だった。
探しに行かないと。急いで玄関まで向かったけれど、志乃の「ちゃんと聞け!!」と怒鳴り声が聞こえてハッとした。
「今、立岡に調べさせてる。だから何かわかるまでそこにいろ。勝手な行動はするな。わかったか?」
「······い、彩葉が」
「ああ、すぐに見つけ出す。けど、それを悟られたら困る。組が混乱しているとなると相良の思うツボだ。今は組員には伝えない。俺達3人で動く。」
手が震えて、上手く返事ができたかはわからないけれど、とにかく何度も頷いた。
部屋に戻ってソファに腰を下ろす。
呼吸がどんどん浅くなる。苦しい。
「彩葉······」
無事に戻ってきてくれることだけを祈った。
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