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第88話 神崎side
身体中に鋭い痛みが走る。
何が起こったんだ。
いつも通り、車に乗って出勤した。まだ本家から離れた場所で走っていたら、突然衝撃が走って、それ以降の記憶は無い。
「っ、はぁ······」
頭がガンガンする。手で額を押さえようと腕を動かした。なのにそこまで届かない。
「······趣味、悪」
手足をそれぞれで拘束されている。ベッドに寝かされて、身動きが取れない。
薄暗い部屋、誰もいる気配はしない。
痛みから首を動かすのも辛くて、浅く呼吸をしていると、部屋のドアが開いた。
「彩葉、起きたのかい」
「······誰だ」
聞いたことのあるような声。やけに心臓がうるさく鳴り出して、恐怖心が煽られる。
「忘れたの?寂しいな。お父さんじゃないか」
「っ、お、前······っ」
暗がりでわからなかった。そばに寄ってきたその男は確かに、父親で、吐き気を催すほどに嫌な記憶が蘇ってくる。
「彩葉はアメリアに似て綺麗な顔だなぁ。お前が女なら良かったのに」
「っ、な、何で、ここにいる······っ」
「最近出所したんだよ。ああ彩葉、もっと顔を見せてくれ」
「ひっ!?触るなっ!!」
男に顔を手で包まれる。怖い、嫌だ、触られたくない。
「そういえば、聞いたよ。極道になったんだって?父さんは悲しいよ。お前ならもっと、賢い選択ができたと思うんだけどなぁ。」
「っ、うぇ······っぁ······」
触られたことに嫌悪感しか感じなくて、吐き気が酷くなり嗚咽が漏れる。
「はぁ······アメリアにそっくりだ。まるで生き写しだよ。ああ、綺麗だなぁ。俺の大好きなアメリア······」
「ひっ、い、やめろ!いやだ、やめてくれっ!」
服を脱がされていく。肌を触られて涙が溢れ出た。
「安心してくれ、痛いことはしないよ。」
この男は俺を通して母さんを見ている。
これは悪い夢だ。起きたらきっと秀がいて、俺を抱きしめて、大丈夫だと言ってくれる。
「アメリア、また俺を愛してくれ」
そう強く信じるしかなかった。
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