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第96話
結局、彩葉の父親は見つからなかった。浅羽組に協力を求めたけれど、浅羽君もカラスの居場所が掴めないらしい。
それに、何日経っても、彩葉からの許可は降りることなくて、誰も様子を見に行けない状態だった。
けれど、立岡がいうには体調は快復している。
「見えてる傷は治っても、そうじゃない傷は治ってない。元々あった傷を深く抉られた様なものだろ。一生消えやしない。」
「······そんなのわかってる」
「なら焦るな。お前がそう焦っても意味が無い。」
わかってるけど、体の傷が回復した彩葉が、変な行動を起こさないかが心配だ。
元から自傷行為が酷かった。俺と暮らしている間にそれは改善されていったけれど、まだ終わったわけじゃない。
「彩葉が、自殺しないか、不安なんだよ」
「······今はトラさんに、立岡も付いてる。大丈夫だ。」
「あの2人も人間だ!眠ってしまえば、気付かないだろっ」
頭を抱えて項垂れる。
逸る気持ちを抑えることが難しくて、滲み出たそれが涙に変わる。
「······っ、彩葉」
「······お前も、ちょっと休め。今は何も考えなくていいから」
そばに寄ってきた梓君に背中を撫でられる。
いつもは逆の立場なのに、彩葉の事になると自分が制御出来ない。
こんなに愛しくて堪らないのに、触れられないなんて、頭がおかしくなりそうだ。
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