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第99話

*** ぱっと目を開ける。 隣を見ると立岡が一緒に眠っていた。ふぅ、と息を吐いて起き上がる。時間は朝の4時。昨日の夜は何時に寝たのか思い出せないけど、随分ゆっくり眠った気がする。 「ん······神崎······?」 「あ、悪い。起こしたか」 「ううん······」 「お前、寝れるようになったんだな。」 「······あー、まあ。」 歯切れの悪い返事。寝起きだから頭が回ってないのかもしれない。 「まだ4時だから、もう少し寝ろ」 「······そうだな」 もう1度寝転んで、もうひと眠りする事にした。 その時は気付かなかった。 立岡の様子がいつもと違ったことに。 時間が経って眠りから覚めると、もう隣に立岡は居なくて、リビングに出ると朝食を作り終えて立っていた。 「あ、おはよう。ご飯作ったよー。顔洗って歯磨きしたら食べな」 「うん」 のそのそ歩いて洗面所で顔を洗って歯を磨いた。リビングに戻ると、立岡は珈琲を飲みながらテレビを眺めている。 「立岡」 「ん?ほら、座って。食べれるだけでいいからね」 「······これ食べる」 「うん。たくさん食べな」 用意されたヨーグルトを食べて、ついていたテレビを見る。 「今日は雨なのか」 「そうみたいだね」 「······雨だと寒くなるから嫌だな」 「でも、そろそろ暑くなるんじゃない?」 ヨーグルトを食べ終わり、皿をテーブルに置くと「おかわりいる?」と聞いてくる。 「うん」 「ジャムもあるよ。好きなの使いな」 「······お前、お人好しって言われるだろ。俺なら俺みたいなやつ見放すぞ」 「いや、言われないよ。お前にだけ。唯一の信頼出来る友達だもん」 トーストを齧り、なんでもない様な表情でそう言われて、何だか俺が恥ずかしくなる。 「······恥ずかしいこと言うな」 「あはは、ちょっと顔赤い」 「うるさい。」 まるで何事も無かったように、会話をする。 俺も立岡も気付いていたけど、何も言わなかった。 「いちごがいい」 「え?ああ、ジャム?どうぞー」 そうするのが1番だと、俺も立岡もわかっていたから。 昨日までのことは何も語らず、淡々と今の時間を過ごした。

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