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第100話
立岡にはまだゆっくりしておけばって言われたけれど、そんな事より動いていたくて、立岡に本家まで送ってもらい仕事を再開した。
「無理しない事。少しでも体がおかしいなって思ったら、どんな時でも言い、連絡して。」
「過保護だな。俺の方が年上だぞ」
「わかってるよ。でも、友達は大切にしたい」
そんな風に言ってくれるから、照れを隠すためにもくるんと背中を向けて、幹部室に行く。
「俺は志乃の所に居るからね!」
「わかったよ」
今日も若は来ているようだ。
さあ、仕事に集中しよう。そう思っていると、幹部室の方から誰かが歩いてくる。
「──······彩葉?」
「っ!」
目が合った瞬間、すぐに踵を返して、見えてきた立岡の背中に突撃した。当然の事でふらついた立岡は、後ろを振り返って何事かと確認する。
「神崎······?え、何、どうした······。ああ、冴島か」
「逃げる」
「いいと思うよ。気が済むまで一緒に逃げよう」
秀が追いかけてくる。
立岡に手を取られて、走った。
「彩葉っ、待って!」
そんな悲痛な声も聞こえてきたけれど、足を止めることは出来ない。
汚れてしまった自分を見せたくなくて、ずっとずっと、逃げ続ける。
そうして走っていたのに、突如腕を掴まれて足が止まった。
「彩葉っ、逃げないでっ!」
「ひっ、ぃ······っ」
すぐそばで聞こえてくる声に息が出来なくなる。
「冴島、手を離せ」
「お前に言われる筋合いは無い」
「お前、医者だろ?今のこの状況見て、そのままでいられるのか?」
体が細かく震える。
秀に触られた途端、汚いって思って、立岡の手を縋るように掴む。
「冴島早く離せ!」
「······っ」
ゆっくりと秀の手が離れて、やっとちゃんと呼吸が出来た。崩れそうになっていた俺を支えてくれる立岡に甘えて、軽くもたれ掛かる。
「わかっただろ。しばらくお前の所には帰せない。用があるなら俺に連絡して」
「······志乃から聞いてる。······彩葉、俺、待ってるから」
その言葉がずんっと心に響いた。視界がぼやけて、誤魔化すように立岡の肩に顔を押し付けた。
「大丈夫だよ。······冴島、悪いけど消えろ」
「······うん」
秀の足音が遠ざかる。
「神崎、俺の部屋に行くからね。」
「······ん」
立岡は情報担当で、周りから邪魔されないようにと個室を貰ってる。そこに移動して、部屋に置いてあった椅子に座らされた。
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