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第106話

「あららぁ、ここでやったわけ?俺は車まで我慢しろって言ったんだけどなぁ」 声が聞こえてそっちを向くと"黒"がいた。 「テメェ、カラス······」 「立岡じゃーん。あれ、今はどっちなのかな?······まあ、何でもいいけど。」 威嚇するような立岡の態度。 そうか、こいつがカラス。 でもそれより、カラスの言葉の意味がわからなくて、立岡を見た。 「お前がしたかった事はなんだよっ!!」 けれど、立岡はそれどころじゃないようだ。 「うん?俺は楽しいことがしたかっただけだよ。本当は車まで連れてこさせて、そこでやるはずだったんだけどね。ほら、そっちの方が邪魔されないし。······あ、お前の計画こっちに全部流れてるから気をつけた方がいいよ」 カラスはそれだけ言うとすぐに駆けだして姿を消した。 「神崎っ」 「大丈夫だから······落ち着け」 いつもは飄々としているくせに、目に涙を貯めて今にも零れそうになっている。 「今すぐ、病院連れていくからっ」 「······泣くなよ」 「お、俺の、せいで······ごめん、本当に、ごめん·····っ」 鎮まりだした喧騒。組員達が急いでやってきて、運ばれてそのまま病院に連れて行かれる。 「俺っ、カラスのこと、絶対超えるからっ」 もう我慢せずに涙を流している立岡はここに残って、若に状況を伝えるらしい。 ふっと気が抜けて、途端体は重く、眠たくなってきて、組員達に声を掛けられて起きていようと思っても、それが叶わなかった。

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