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第109話

病院に行くと、眠る彩葉の横に夏目君がいた。俺と立岡を見て軽く頭を下げる。 「彩葉······」 「すみません。俺相馬の事も見ておかなくちゃいけなくて、神崎のこと、任せてもいいですか」 「うん。気にせず行っておいで」 「ありがとうございます。」 相馬君もここに居るんだ。今回の抗争は本当に沢山の怪我人を出した。 「彩葉」 名前を呼びながら、白い頬を撫でる。 「痛かったよね」 何度も怪我をしてこうして眠っている人を見た。けれど、こんな感情になるのは初めてだ。涙が勝手に溢れては、ぽたぽたと落ちていく。 「冴島······」 「お前のせいじゃないって、わかってる。」 「············」 「彩葉を護ろうとしてくれたって、わかってる。」 わかってるけど、悔しくて仕方が無いんだ。 「······いいよ。俺の事恨んで。そういうのには慣れてる」 「······そんなことしない。それに、恨まれることに慣れるな」 立岡が彩葉に手を伸ばして、手を取った。 「護れなくて、ごめんね」 立岡は護ろうとしてくれたんだ。そして彩葉は組員の1人で、こうなるのも覚悟の上だった。むしろ、この怪我で済んでよかったと思わないといけないのかもしれない。 「冴島、俺帰るね。神崎が起きたら教えて」 少しして帰っていった立岡。病室で彩葉とふたりきりになって、彩葉の綺麗な手を掴みながら、目を覚ます時を待った。

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