113 / 188
第113話
夕方頃に秀が戻ってきた。そして立岡もやって来て、俺と目が合った途端に頭を下げたから驚いた。
「ごめんっ」
「は?何だよ、それやめろ。」
俺が怪我を負ったことを悔やんでいるようだけれど、そんな必要は無い。きっとあのまま俺が死ななかったのは立岡のおかげだ。すぐに男を取り押さえるように指示を出していたし。
「お前には感謝しかねえから、謝ったりするな」
「······でも、怪我して······それに俺、護れなかった」
「あのなあ、俺は眞宮に入った時点で覚悟決めてるんだ。こんな怪我くらいなんとも思わない」
そう言うとまだ納得のいっていない表情でゆっくりと頷いた。
「カラスのこと、調べてた」
「ああ」
「あいつには勝てる気がしない」
「お前のくせに、弱腰だな」
普段の立岡からは聞けない台詞。
立岡自身もそう思ったようで小さく笑っていた。
「あいつは、経験数が違うよ。」
「結局カラスは浅羽に戻ってねえのか?」
「もし戻ったなら連絡が来るはずだよ。カラスについては志乃が浅羽に協力を求めてたからね。」
「そうか······。あ、ところで相良はどうなった。」
そう聞くと立岡が全部を説明してくれた。
結局勝ったのはうちで、相良は終わったらしい。舞は納得のいっていない様子だったけれど、親父さんに無理矢理頭を下げさせられたとか。
「初めからそうすりゃよかったのにね。可愛い可愛いって育てたからあんなのになるんだよ」
「でも梓君を選んだ時にケジメをつけてなかった志乃も悪いけどね」
秀がそう言ったのと同時に病室のドアが開いた。そこには若が立っていて、「あ、やば」といいながら口元を押さえる秀の頭を叩きたくなる。
「そうだよなぁ、俺が悪いんだよなぁ」
「悪いっていうか······ほら、えっと······」
「志乃が悪いんだって」
「おい立岡!!」
若は面白がってああ言っただけなのに、本気にしてる秀が可笑しい。
「神崎、無事か」
「はい。······あ、そういえば相馬がつまらなさそうでしたよ」
「あいつは······あいつ、うるさいからな。夏目から連絡があって、うるさいし元気そうだからもう帰るってな。」
「さっきもここに来て駄弁って帰りました」
あいつのべらべらと馬鹿みたいに話す癖は治した方がいいと思う。
ともだちにシェアしよう!