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第114話
少しだけ組の話をして、立岡を連れて若は帰っていった。
「じゃあ、そろそろ時間だから帰るね。」
「ああ」
「······やっぱり泊まろうかな」
「無理だろ。危ないから早く帰れ」
「危なくなんかないよ」
最近はあまりにも忙しかった。
だから頭の中を整理させて、落ち着きたい。
「じゃあ、また明日来るね」
「ああ」
「またね」
渋々といったように帰っていった秀。
ドアが閉まり、静かになった病室で刺された時を思い出した。
ああもっと、もっと深くまで刺してくれたらよかったのに。そしたら俺は楽になれたのに。
間違っていたのはきっと生まれた時からで、それを長々と、もう30年も続けてきた。
心が疲弊して、どうすれば楽になるのかを探してる。
今までも気付いていた。俺は母さんが死んだあの時に死んでおくべきだったんだって。そしたら······今だって、こんなことにはなっていない。
こんな汚れた体を秀に触られるのが嫌だ。汚れきった自分を誰かに晒すことも恥ずかしくて、消えてしまいたい。
でも、俺の周りにいる人達はそれを許してはくれないだろう。
ベッドに横になり、窓の外を眺める。
もう太陽は空にはいなくて、代わりに月が輝いていた。
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