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第119話
連れてこられた場所はとあるマンション。
部屋の中は様々な物で溢れていた。
「汚い」
「そんなこと言われたって仕事だからなぁ」
「······勝手に片付けるぞ」
「わー、助かる。あ、でもそれは触らないでね」
言われた場所には触れずに、散らばっている物をとにかく寄せ集めた。
「立岡の家は物が少ないのに」
「双子だからって何もかも一緒じゃないよ。育てられ方も違う。」
「······悪い」
「別に俺は気にしないけど、凱に同じようなことは言わない方がいいよ。あいつのコンプレックスは家族なんだ。さっきの言葉で発狂くらいは楽にするんじゃない?」
日本語がおかしい気がする。楽しんでるのか、憐れんでるのかよくわからない表情と声音に、本当に立岡と兄弟なのかと疑いたくなる。
でも、容姿や声自体は本当にそっくりで、その疑いもすぐに晴れるんだけど。
「あはは、また俺に協力求めてる。俺のことが嫌いなくせにね」
「······立岡か?」
「うん。神崎が見つからないから手伝ってって。その前にはカラスの事も手伝ってほしいって言ってきたんだよ。」
俺にとって立岡はなんでも出来るやつで、だからこうして誰かに頼っているのを見るのは初めてだった。
「あいつが俺やカラスに勝てるわけがないんだよ。自分で言うけど、俺もカラスも天才だからなぁ。あいつは凡人だ。」
「俺はあいつもすごいと思う。」
「ああ、そう?まあ取り繕う技術だけは一流なんじゃないかな。だって自分の所から情報盗まれるようなこと、俺達ならまずないよ。今回君が怪我したのはそのせいでしょ?」
「······カラスが筒抜けだって言ってた······」
「そう。まあ、俺がカラスに加担したんだけどねえ。」
「え······」
それはどういう意味なのか問い正そうとした時、リビングのドアが開いた。
「あれ、帰ってきてるじゃん。おかえり、律」
「ん、ただいま」
俺達以外誰もいないと思っていたここには、もう1人いた。
風呂上がりで上半身は裸のまま、濡れた髪をタオルで拭いている。
「······カラス」
「神崎君も来たんだねえ。どう?背中の傷は。」
「何で······」
驚いて声がそれ以上でなかった。
律がカラスに近づいて、抱き合ったかと思えばそのまま口付けをする。その光景も不思議で仕方が無い。
「逃げてるから、匿ってんの。」
「ふーん?何でもいいけど、セックスするよ」
「え、今から?」
「うん。」
ソファに押し倒された律が、荒々しくキスをされて服を脱がされていく。
「っ!」
急いでリビングから出て廊下に座り込んだ。
次第に聞こえてくる嬌声が大きくなって、耳を塞ぐ。
誰が何をしていたっていいけれど、他人のいる前でそういうことは遠慮してほしい。
「······匿ってもらう場所、間違えたな」
深い溜息が漏れた。
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