120 / 188

第120話

気づけばそのまま眠っていて、「起きろよ」と軽く体を蹴られて目を覚ました。 立っていたのはカラスで、今度は全裸で俺の前に立っている。 「終わったってば。」 「······下着くらい履け」 「無理。あ、しゃぶってくれる?」 「それこそ無理、気持ち悪い、死ね」 離れてリビングに行くと、ソファでビクビクと痙攣している律がいて、雄臭さにすぐに窓を開けた。 「律」 「ん······ん、ぁ、なに······」 「風呂入れ、臭い」 「それは、そうなんだけど······はぁ、ぁ······」 顔を腕で覆って脱力しきってる律に触れるのは違うと思って、とにかく肌を隠すために落ちていた服をかけた。 「風呂、連れてってよ」 「······雄臭くて嫌だ」 「えー······」 「カラスに連れてってもらえば」 「あいつは淡白なの。ヤったあとのほんわかした雰囲気なんて微塵もないから。」 ゆっくりと起き上がった律は傍にあった煙草に手を伸ばし、そのまま口に咥えて火をつけた。 「はぁ······あー、スッキリした。······あ、悪いね。お前は溜まってんのに」 「溜まってない。」 ゆっくりと立ち上がってそのままリビングを出て行く。きっと風呂に入りに行ったんだろう。 代わりにカラスがやってきて、すぐに顔を背けた。 「なあ神崎」 「············」 「返事をしろよ。お前がここにいることお前の彼氏に伝えるぞ」 「······何だ」 カラスに呼ばれて、仕方なく返事をすると嫌な笑顔を貼り付けながら俺の前に座る。今度はちゃんと服を着ていて安心した。 「立岡凱から情報を盗んで俺に渡したのは律だ。」 「加担したって本人から聞いた。でも何でそんなことをするんだ。あいつらは兄弟だろ」 「わかるだろ?律と凱は違う。生まれながら努力しなくても何でもできた律と、努力しなけりゃ何もできない凱。溝ができて当たり前だ。」 俺の知っている立岡は、いつもなんでも出来ていた。 俺達に見えないところで、色んなものに押し潰されるようになっていたとは。 「あいつの母親は俺たちと同じ職業だ。とある仕事で母親がミスをしてね、それを押し付けられて、取引相手にボコボコにされたんだよ。可哀想だよね。それで母親を恨んでる。」 「それはそうだろ。誰だって恨む」 「うん。だから、それくらい彼の闇は深いってこと。俺には理解できないけどねえ。」 楽しそうに話す様子に腹が立って、本当はすぐにでも立岡に会いに行きたいと思ったけれど、どうしても足が動かなかった。

ともだちにシェアしよう!