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第120話
気づけばそのまま眠っていて、「起きろよ」と軽く体を蹴られて目を覚ました。
立っていたのはカラスで、今度は全裸で俺の前に立っている。
「終わったってば。」
「······下着くらい履け」
「無理。あ、しゃぶってくれる?」
「それこそ無理、気持ち悪い、死ね」
離れてリビングに行くと、ソファでビクビクと痙攣している律がいて、雄臭さにすぐに窓を開けた。
「律」
「ん······ん、ぁ、なに······」
「風呂入れ、臭い」
「それは、そうなんだけど······はぁ、ぁ······」
顔を腕で覆って脱力しきってる律に触れるのは違うと思って、とにかく肌を隠すために落ちていた服をかけた。
「風呂、連れてってよ」
「······雄臭くて嫌だ」
「えー······」
「カラスに連れてってもらえば」
「あいつは淡白なの。ヤったあとのほんわかした雰囲気なんて微塵もないから。」
ゆっくりと起き上がった律は傍にあった煙草に手を伸ばし、そのまま口に咥えて火をつけた。
「はぁ······あー、スッキリした。······あ、悪いね。お前は溜まってんのに」
「溜まってない。」
ゆっくりと立ち上がってそのままリビングを出て行く。きっと風呂に入りに行ったんだろう。
代わりにカラスがやってきて、すぐに顔を背けた。
「なあ神崎」
「············」
「返事をしろよ。お前がここにいることお前の彼氏に伝えるぞ」
「······何だ」
カラスに呼ばれて、仕方なく返事をすると嫌な笑顔を貼り付けながら俺の前に座る。今度はちゃんと服を着ていて安心した。
「立岡凱から情報を盗んで俺に渡したのは律だ。」
「加担したって本人から聞いた。でも何でそんなことをするんだ。あいつらは兄弟だろ」
「わかるだろ?律と凱は違う。生まれながら努力しなくても何でもできた律と、努力しなけりゃ何もできない凱。溝ができて当たり前だ。」
俺の知っている立岡は、いつもなんでも出来ていた。
俺達に見えないところで、色んなものに押し潰されるようになっていたとは。
「あいつの母親は俺たちと同じ職業だ。とある仕事で母親がミスをしてね、それを押し付けられて、取引相手にボコボコにされたんだよ。可哀想だよね。それで母親を恨んでる。」
「それはそうだろ。誰だって恨む」
「うん。だから、それくらい彼の闇は深いってこと。俺には理解できないけどねえ。」
楽しそうに話す様子に腹が立って、本当はすぐにでも立岡に会いに行きたいと思ったけれど、どうしても足が動かなかった。
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