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第121話 冴島side
立岡から連絡が来るまで彩葉の家で待っていた。帰ってきたなら、それで安心できるから。
けれど一向に連絡はなくて、その日の夜に立岡が家に来た。
「······匿われてる」
「え?」
「神崎が逃げた。あいつを頼ったってことは戻ってこないかもしれない」
「な、何、どういうこと?あいつって?」
それ以上先を言おうとしない立岡は、悔しそうに唇を噛んでいる。
「神崎が逃げた理由は予想できる。お前は?」
「······わからない」
どうして自らいなくなったのかわからない。俺から逃げたかったとしても、何を理由になのかはわからない。
「神崎は愛されることが怖いんだ」
「愛されること?」
「そう。今までの起こったことは全部、愛されたことから始まったからって」
「そんな······そんなこと、ないよ」
「たとえお前がそう思ってても、あいつが思わなきゃ意味が無い。それでお前から逃げた。愛し合っているお前から。」
すごく悲しい。俺から逃げたことじゃなくて、愛が怖いと思っていることが。
「志乃にはまだ伝えない。伝えたら、眞宮にも探されて見つかったら尋問でもあるんじゃないかな。あいつは幹部で、情報を持ってるからね」
「······志乃は、そんなこと」
「あいつは冷酷だよ。ケジメはつけさせる。」
「早く見つけないとね」
「······もう、このままでもいいと思うけど」
「え?」
立岡が項垂れて、そのまま顔を机に伏せた。
「俺はあいつらに勝てない。あいつらの居場所はわからないし、これからも知ることはないと思う」
「······何でそんな弱気なんだよ」
「弱気なんじゃない。どうしたって変わらない事実だよ」
立岡の言う”あいつら”はそんなに強敵なのか。
「彩葉を見つけたいんだ。頼む、手伝ってくれ」
「······手伝うことは出来る。でも、見つけられるかはわからない」
「何もしないよりずっといい。手伝って。」
そう言うと1度力なく頷いた。
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