125 / 188
第125話
それを見た律は鼻で笑う。
「凱がお前を気にかける理由がわかった。お前達は似てるんだよ。愛されたいくせに、実際にそうされたら怖いんだ。」
「······立岡は俺とは違う。もっと複雑な理由があると思う。」
「無いさ。人は単純だから。ほら、得体の知れないものを食べるのは怖いだろ?それと同じ。愛されたことの無い人間が初めて愛に触れたら、感じるのは必ずしも幸せとは限らない。」
涙を拭い、律をじっと見る。
「立岡を助けられるのは誰だと思う」
「······凱は誰にも助けられないよ。」
「そんなことは無いだろ。きっとあいつは助けて欲しいって思ってる」
「お前の頭はお花畑だな」
呆れたようにそう言われてカチンとした。
こいつも、そう言えば立岡も秀も······年下のくせに俺に遠慮がない。別にそれはいいけれど、お花畑だとか言われたら、そりゃあ少し腹が立つ。
「年上は敬えよ」
「敬えるような人ならそうしてる」
「······いちいち腹が立つな」
そんな話をしていると、カラスが部屋からふらっと出てきた。
「ねえ、やっぱり思ったんだけど、神崎、お前帰らない?」
「何言ってんの。俺が連れてきたんだけど」
「だってさ、いつもならまだセックスしてるだろ。お前死んだように寝るじゃん。今日はまだピンピンしてるし、ってことは足りないんだろ?」
「······それはお前が絶倫なだけだろ。俺はもういいっていつも言ってる」
突然2人のそんな事情を聞かされて、どうしたらいいのかわからない。耳と目を塞いて、聞かないようにした。
「──なあってば!!神崎!」
「······うるせえな」
「帰れって!お前らの痴話喧嘩に俺らを巻き込んでこっちの空気を壊すなよ!最低野郎かお前は!」
「てめぇにだけは言われたくねえよ」
それは俺が言いたい台詞だ。最低野郎は誰に聞いても俺ではなくてカラスなはず。
「あーもう、律、弟に電話しろ。今すぐ下に降りろって言え。俺はこいつを連れて行くから」
「えー、もうちょっと話したかったんだけど。」
「いつでもできるだろ。早くこいつを帰らせて続きしねえと寝れねえよ」
「それこそいつでも出来ると思うけどねえ。」
カラスに腕を掴まれる。ヒョロいくせに思っていた以上に力が強い。
「逃げるとか考えるなよ。面倒事は御免だ。」
「······お前から始めたくせに」
「でももう終わっただろ。」
屁理屈ばかり言いやがる。
立岡の方がずっと真面目で努力家だと思うのに、どうしてこいつの方が腕が上で、立岡をああも苦しめるんだろう。
「お前、友達いないだろ。」
「そんな荷物は必要ない」
この冷たさが、そうさせているのたろうか。
ともだちにシェアしよう!