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第127話 冴島side
がちゃ、と玄関から音がした。
驚いて動くことが出来ずに、ただ玄関に繋がるリビングのドアを見る。
「──秀」
「い、彩葉······」
そこから現れたのは彩葉で、疲れきった様子で俺を見ていた。
「彩葉、体は?辛くない?ほら、ここに座って······」
「秀」
「何?あ、何か温かい飲み物でもいれようか。ちょっと待ってね」
「秀っ」
彩葉が珍しく大きな声を上げた。キッチンに行こうとしていた体を、彩葉の方にむける。
「話が、したい」
「······うん」
真剣な表情でそう言われると、拒否することなんてできなくて、大人しく椅子に座った。
「まず······勝手に病院を抜け出して、迷惑を掛けた。悪かった」
「いいよ。戻ってきてくれたからね」
そう言うと彩葉は唇を噛んだ。そこが切れて血が流れる。
「彩葉、痛いでしょ······?」
手を伸ばしてそこに触れようとすると、手を叩き落とされた。
「どうしたの」
「······もう、やめよう」
「え?」
「······もう辛いんだ。だから、やめたい」
何をやめたがっているのか、理解はできたけど納得はできなかった。
「何で······」
「俺の体は汚れきったし、こんな俺を愛して欲しくない。それに愛される事はもう······懲り懲りだ」
「そんなの······彩葉は何も汚れてないよ。ずっと綺麗なままだ。」
このまま引下がることなんてできない。
「お前を振り回してばかりで悪かった。」
「彩葉······」
「もう終わりにしよう。お前も、もっと自分を愛してくれる人を見つけろ。」
「彩葉っ」
「大丈夫、俺よりもずっとお前を愛してくれる人は沢山いるから」
柔らかな笑顔を見せてくる。
ああもう、ひどいな。
こんな時も、彩葉は残酷なくらい綺麗なんだ。
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