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第128話

彩葉に追い出されるようにして家から出た。 途端、今までの慌ただしかったのは全部夢なんじゃないかと思えてきて、渇いた笑いを零す。 「······帰ろう」 ちゃんと、元の日常に。 別れた理由は納得はできなかったけれど、あんな表情をされちゃ何も言えない。 あんなに綺麗な人に、この先出会えることは無いだろう。容姿はもちろん、中身だって。 彩葉には、早く新しい心の拠り所ができて、1人で抱え込むことがないようにしてほしい。 いつだって俺が支えていたかったけれど、こうなってしまったからには仕方がない。 もっと早く、ちゃんと対処していればよかった。 後悔ばかりが溢れてきては、視界を滲ませる。 こんなにも好きなのに、それが彩葉を苦しめる。 「······ごめんね」 自宅に着いて、零した声は力無く震えていた。 *** あの日から数日経った。 立岡が言うには、彩葉はちゃんと病院に戻って抜糸をし、快調に向かっているらしい。 「······はぁ」 俺はと言うと、最近は何もやる気が出なくて毎晩酒を浴びるように飲んでは、いつの間にか眠り朝を迎える生活を送っていた。 「ああ、くそ······」 無性にイライラして、それを睡眠で誤魔化す。 「彩葉に会いたい······」 でも上手くはいかずに、ただ時間を無駄に過ごすだけ。 志乃にはこういう理由で彩葉と別れたと伝えた。だから彩葉を見ることが出来ないって。そうしたらただ一言「そうか」とだけ言葉が返ってきて志乃らしいなと思った。 俺はまだ何も整理がついてないのに。 身体がだるくて、外に出るのも億劫だ。 考えるのは彩葉のことだけで、本当に女々しいなと思う。

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