131 / 188

第131話

家に着いて夏目にベッドまで運ばれて、すぐ側に携帯が置かれた。 「何かあったら誰でもいいから連絡すること。わかった?」 「······わかった」 「熱あるし、冴島さん呼ぶ?」 「要らない」 それは遠慮して、夏目に礼を言って目を閉じる。 「体調良くなるまで休んで。無理はしないこと。消えたいって思ったら、話を聞かせて」 「······ありがとう」 「いいえ。じゃあね」 このまま眠れば治る気がする。 きっとこんなことになってるのは俺だけなんだろうな。情けない。 「ダメだ、寝よう」 どうしても考えてしまう。 いくら考えても答えは出ないのに。 この選択で間違ってなかったのかどうかなんて。 やめたいって言った時、秀は拒否をしなかった。だからこれで合ってるんだって思ったんだ。それが今になって揺れる。 強がって、俺より愛してくれる人がいるって言った。 もっと、縋り付いても良かったんじゃないか。 泣いて、喚いて、そうやって繋ぎ止める方法だってあったのかもしれない。 こんなに汚いけど、隣にいてほしいって。 同じものを返せないけど、本当は愛してほしいって。 「秀······」 いつも隣にいた熱が、今はもう無い。 それを改めて感じて、寂しくなった。

ともだちにシェアしよう!