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第132話 冴島side
「おい、もう帰れよ」
「だって······え、ていうかお前が呼んだんじゃんか」
俺の家に立岡がいる。それに対して違和感しかない。
「いや、呼んでない。お前が勝手に俺の家に来たんだろ」
「あ、バレた?」
「バレるだろ普通」
毎晩寂しくさを紛らす為に酒を飲んでいた。転がる空き缶を見て立岡はぐっと眉を寄せる。
「お前さ、本当······酒に逃げるの辞めたら?何か間違い起こすかもよ」
「間違いって?」
「外でベロベロに酔って、そのまま女を持ち帰りってね」
「持ち帰りたいのは彩葉だ」
ハッキリとそう返すと、呆れた様子で溜息を吐かれた。
「志乃によるとね、最近神崎が仕事を頑張ってくれて助かるんだけど、ついに体調崩したって。」
「ああもう、彩葉は無茶するから······」
「自傷行為が酷くなったって。消えたいって言ってたらしいよ。夏目が聞いたみたい」
「は······、そうなるくらいなら、どうして······」
いや、彩葉の事だ。俺のことを考えた結果なんだろうけど、それは俺のことを考えているようでそうでは無い。
「今俺が助けるのは違うんだろうな」
「······もう強引にいったら?お前はいつも遠慮してるからなぁ。神崎には少しくらい強引なのが丁度いい。」
「でもさぁ、それで嫌われたら元も子もないよ」
「嫌われないよ。あいつは今寂しいんだ。······お前ならわかるでしょ。」
そう言われて、確かにそうだなと思った。
だって俺と一緒にいた時は、自傷行為もマシになっていた。
誰かと一緒にいることで落ち着きが持てていた。
「家に押しかけてみたら?」
立岡は冗談交じりで笑いながらそう言ったつもりだろうけど、今の俺にはそれが名案に思えた。
まだ鍵を持っている。返さなきゃと思っていたけど、なかなかそれが出来なかった。
「······行ってくるよ」
「え······嘘だよね?」
「本気」
「冗談で言ったんだけど······?」
そう言えば体調を崩したって言っていた。ちゃんと診れるように準備しないと。
「嫌がったらやめてあげてよ」
「わかってる。お前も帰れ」
「ドライだなぁ」
彩葉の家の鍵を握り締める。
立岡が帰るのと同時に家を出た。
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