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第136話 神崎side
夢を見た。
秀がいて、俺に愛してるって言ってくれた夢。
現実じゃないにしても嬉しかった。
自分の保身のために秀と別れたのに、秀はそんなこと気にしていないように、優しく微笑んでくれたから。
目を開けると体が楽になっていた。
起き上がって水を飲みにキッチンに出る。
コップをとった時に、腕に視線が行く。ずっと傷だらけだったそこに包帯が巻かれてある。それから違和感を感じて袖を捲ると、腕の関節部分には注射をした後に貼るシールがあって、頭の中が混乱しだした。
「ゆ、夢じゃ、なかったのか······?」
だとしたら、恥ずかしいことをベラベラと話した気がする。
一気に顔が熱くなって、片手で口元を覆った。余計なことは言ってないだろうか。熱にやられていて記憶が曖昧だ。
「······でも、帰ったのか」
今ここにいないとなると、きっと俺を診てくれた後、すぐに帰ったんだと思う。
ここにいてくれてよかったのに。
ハッと我に返った。
そんなこと、俺が思うのはきっと間違っている。
自分の本当の思いと、自制する思いがぶつかり合って苦しい。
思うがままに生きてきた結果が今で、それなのにまだ思うように生きたいと願ってしまう。
「······下らないな、本当に。」
そんな思いごと、下らない俺が早く消えてしまえばいいのに。
でももし今そうなれたとしても、きっと親父や若、幹部達に迷惑をかけるのはわかっている。
今すぐにそんなことは出来ない。まずは徐々にでも身辺を整理しないと。
「······まだ生きないと」
迷惑をかけないように、ちゃんと。
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