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第139話

それからどうやって家まで戻ってきたのか、記憶が曖昧だ。 家に着いて風呂に入って、髪も乾かさずにソファに寝転ぶ。 「······女々しいな」 頭の中にはまだ、さっきの秀と女の姿があった。 俺が女ならよかったのにとか、そんな話じゃなくて、ただ愛される自信があれば良かった。 未だに怖いと思う。 ああもう、どうして俺はいつもこうなんだ。 そんな時、携帯が短く震えた。画面を見ると、何故か律からメッセージが届いていた。 「······今すぐは無理だろ」 内容は今すぐ立岡の家に来いってもの。無視をしようと思っていると今度は電話がかかってきた。 「······はい」 「あ、あのさ、凱に何かした?」 「は?何もしてないけど」 「えー、おかしいなぁ。凱が凄く荒れてるんだよね。無理矢理理由聞き出したらお前のせいだって言うからさ。」 何か、悪いことしたっけ。 考えてみるけど思い当たらない。 「やっぱり、何もしてないと思う。」 「あー······、なあ、もしかして冴島秀と別れたの?」 「······ああ。」 「······それでかなぁ。あいつは自分が悪かったって自責してるのかも。」 そう言われて「立岡には何もされてない。」とすぐに反論した。 「違うよ。君が初めに攫われた時、凱がもっと早く君を見つけだして、冴島秀の所に返していればよかった、とか、抗争の時ももっと手があったはずだ、とか。そしたらこんな結果になってないってね。」 「······そんなの、そうであったとしても結果は変わらない。俺が決めることだから。」 「あのねえ、凱の性格からして、そんなに素直に物事を受け止められると思う?無理だよ。あいつは歪んでる。俺の知ってる人間の中で1番ね。」 俺はそうは思わなかった。 立岡程、全くの他人に優しくなれる人間はいないと思う。俺はそうやって立岡に救われてきたから。 「兎に角さ、うちの弟どうにかしてくれないかな。俺はカラスの世話をしないといけないし、成人男性2人を面倒見れるほど器用じゃないから。」 「俺にどうしろって言うんだよ」 「凱を説得して。お前のせいじゃないからって言い聞かせて。それか早くヨリを戻せ。──じゃあな」 一方的に電話を切られた。 心が完全に疲弊しきったように思えた。

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