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第144話 神崎side

どうすればいいのかわからない。 ずっと暗闇で藻掻いているような感覚。 「············」 「今から梓さんのとこ行ってくるから、とにかくお前はこれを終わらせること。」 「······ああ、悪いな。」 仕事に復帰して、秀に会ったあとから、以前みたいに休まず仕事をするっていう事ができなくなった。どうしても頭の中で考えても答えの出ないようなことを考え続けている。 速水もそれを知っていて促進してくるけど、これは完全に自分の落ち度だからただ申し訳なく思うだけ。 「神崎、しんどいならかわるよ。」 「······いや、大丈夫だ。」 夏目は優しいから、すぐに俺を助けようとしてくれるけれど、それに甘えてばかりじゃダメだ。 「あー、クソ。立岡また電話に出ない·······。」 相馬が言った立岡という言葉に反応して、体がビクッとした。 律に頼まれたこと、ちゃんとひとつひとつを整理していかないといけないのに、それができない。 「あ、そういえば神崎は立岡と仲良かったよな?連絡してくれよ。」 「······わかった。」 こうして無理矢理にでもしないと電話すらかけられない。 携帯を出して電話をかける。コール音が鳴る間、ずっと心臓がバクバクしていた。 少しするとプツッとコール音が切れて、「何」と低い声が聞こえてくる。 「っ、相馬が······お前に電話しろって······。」 「仕事の事?それなら今は無理。」 「······相馬に代わるから、自分で伝えてくれ。」 そう言うと「待って」と厳しい声が飛んできた。 「······何でそんなに怯えてるわけ?お前が俺に怯える理由は?」 聞かれてる内容にすぐに返事ができない。自分でもわからないんだ。この前別れた時に立岡を呆れさせた事が原因なのかもしれないし、俺のせいで立岡が荒れてるって律に言われたからかもしれない。 「······怯えてない。」 「ならもっと堂々とすれば?逆にイライラするんだよ。俺に気遣ってるとか気持ち悪い。反吐が出る。」 「そこまで言わなくてもいいだろ。」 「言うよ。気持ち悪い。」 イラッとして舌打ちを零すと、「ハッ」と乾いた笑いが鼓膜を揺らした。 「カラスと律に何言われたのかは知らないけど、俺が思い詰めてるだとか、それが自分のせいだとか、そんなこと思ってるならお前は自意識過剰だよ。そういうのうざいからやめて。······じゃあね。」 電話が切られて、久しぶりに怒りがわっと湧き上がる。 「か、神崎······?」 夏目が俺を見て不安そうな顔をする。申し訳なく思っていたけど、今はこの仕事を夏目に手伝ってもらおう。 「おい相馬。今日の見回りは俺が行く。」 「えー?何で?それより電話は······って、え、お前キレてんの······?怖、それで見回り行くの?何人か殺すつもり?無理無理怖すぎるぅ······。」 「神崎、見回り行くのはいいと思うけど、若にちゃんと伝えて行ってね。」 夏目の言葉に頷く。 煙草を咥えて火をつけた。

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