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第146話
そのまま放っておけるはずなく、立岡を連れて組に戻った。
どうするか悩んで、立岡の為だと割り切り部下に秀を呼ぶように頼んで、立岡の様子を見ていた。
クマが酷い。ちゃんと眠れてなかったのがわかる。前から眠れないって言っていたけど、ここまで酷くはなかった。
律が俺のせいで立岡が荒れているって言ってたから、きっとこれも俺のせいなんだろうな。申し訳なく思っていると、部屋のドアが開いた。
「······彩葉」
「······立岡、診てやって。」
秀が来て、立岡から離れる。
立岡を起こして話を聞き、点滴を打った秀は、すぐに診察を終えて俺に向き直った。
「眠れてなかったみたいだね。疲労のせいかな。」
「······そうか。」
沈黙が流れて、それがすごく痛くて、逃げるように部屋を出ようとしたら「彩葉」と名前を呼ばれてドアにかけた手がゆっくりと落ちた。
「ゆっくり話がしたい。」
「······俺は、話すことは無いから。」
「うん、だからお願い。俺に時間をくれないかな。」
俺だって本当は話したいことがあって、でも素直にそれが言えない。
「······1時間だけだ。」
「ありがとう。すごく嬉しいよ。」
「明日、お前の家に行く。それでいいか?」
「うん。待ってるね。」
秀が少し硬い笑顔を見せてきた。それが正直寂しくて、視線を逸らした。
「仕事が終わってからでいいからね。」
「······うん。」
「遅くなっていいからね。」
「わかった。」
でも、どこまでも優しいんだ。
それがわかるから、罪悪感を感じる。
「点滴終わるまでここに居るから、何かあったら言ってね。」
「······秀」
「ん?何?」
やっぱり、少し縋りたいと思う。
ほんの数センチ。触れることが出来る距離なのに、それが出来ない。
「彩葉?」
「······ごめん、なんでもない。」
今度こそ部屋を出て、幹部室に戻り煙草を吸った。
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