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第152話 神崎side
触れてしまえば楽だった。
でもやっぱり、まだ少し怖いから、それ以上は進めない。
「彩葉、今日は泊まっていく?」
「······ああ。」
何もしないで、ゆっくりと過ごしたい。
夜になって、ご飯を食べてソファーに座っていた。
「お風呂沸かしてくるね。それから······立岡に報告してくる。たくさん世話になったから······。」
「俺も礼を言いたい。できたら代わってくれ。」
「うん。」
その場で直ぐに立岡に電話をする。昨日は体調が悪くて倒れたのに、たかがこんな事の為に電話をするか悩んだけれど、立岡は俺達のことを気にしていてくれたから、早く伝えた方が良いんだと思う。
「立岡?体調はどう?」
どうやら電話が繋がったようだ。
昨日のあれから立岡には会っていなかったから、安心した。
「うん、よかったよ。別に話があって······彩葉との事なんだけど、ちゃんと解決できたよ。」
秀が俺を見て優しく微笑む。
それにつられて、口元が少し緩んだ。
「彩葉に代わるね。」
携帯を渡されて、耳に当てる。
「もしもし」と言うと、「神崎ィッ!」と大きな声で名前を呼ばれた。
「本当にお前らは······。やっと元に戻ったんだね。よかったよ。」
「悪かった。お前に迷惑ばっかりかけて······」
「本当だよ、凄い心配した······。いや、元は俺のせいなんだけどさ。とにかく良かった······肩の重荷が1つ降りたよ。」
「ありがとう。でも、お前のせいじゃない。俺は俺のしたいようにしただけだから。」
「それでもだよ。あー、よかったぁ。安心したよ······。安心したら眠くなったから寝るね。おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」
電話を切って、携帯を秀に返した。
立岡といえば······律のこと、話すべきなのだろうか。
いやでも、俺が勝手にそんな事をするのは違う。わざわざ隠れて立岡を守っているんだ、それの邪魔をするのはおかしい。
「待っててね、すぐ沸かすから!」
「······あ、うん。ありがとう。」
廊下に消えていった秀の背中をぼーっと見ながら、そんなことを考えていた。
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