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第155話
もしかして、いい夢を見ていただけなんじゃないかと不安だった。
だから起きたくなかったけど、隣にじんわりと熱を感じて、ゴロンとそっちの方に寝返りを打つと秀がいた。そして俺を抱きしめたまま眠っている。
「······おはよう」
小さくそう呟くと、秀がゆっくりと目を開けた。
「ん······彩葉、おはよう······。」
「仕事あるから起きる。」
「うん······うん、でも、もうちょっとだけ······。」
ぐっと引き寄せられる。俺の首元でそのままスースーとまた眠り出した。
「秀、起きないと······はぁ······」
まあ、少しくらい遅れてもいいか。最悪、秀から若に連絡を入れてもらおう。
俺もそっと秀を抱きしめて、髪に顔を埋めて目を閉じる。ほわほわとした優しい時間。本当に起きないといけないのに、まだこの時間に浸っていたい。
目を開いて、秀の髪を撫でながら「起きて」と伝える。
「秀、遅刻する。」
「······大丈夫だよ、ちゃんと伝えるから、ね······?」
「でも······」
「正直、彩葉と少しも離れたくないんだよ。」
首筋にキスをされて、チクっと痛みが走った。そのまま馴染ませるようにそこを舐められて、背中がゾクゾクとする。
「んっ、秀······」
「彩葉、逃げないで。」
「ぁ······待て、待って······!」
服の中に手が入ってきて、慌ててその手を押さえた。
「まだ嫌だっ」
「っ、······ごめん」
起き上がった秀が深く息を吐いた。
違う、悲しませたいわけじゃない。
「秀、悪い······あの、もうちょっとだけ待ってくれ。」
「うん、ちゃんと待ってるよ。」
ヘラっと笑った秀の表情が嘘に見えて、早く元に戻らないとと気持ちが酷く焦った。
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