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第156話

結局遅刻することなく本家に行くことができた。けれど、気持ちは少し重たい。 「昨日お前が早く帰るから俺が遅くまでいる羽目になったんだぞ!」 「知るかよ」 朝早くから相馬にそう言われて、面倒臭くて適当にあしらった。しばらくすると速水がきて、「今日も梓さんの護衛だから、あとよろしく。」と言って直ぐに出ていってしまう。 「前まで夏目の担当じゃなかったのか?何で最近は速水ばっかりなんだ?」 「えー、だって速水はちゃんと護衛をするけど、俺は梓君と遊んじゃうからなぁ。」 「ああ、なるほど。速水はドライだからな。」 愛想良く見せて、実は凍てつくように冷たい。それを梓さんが知る事はないだろうけど、もし知ってしまえばショックは大きいだろうな。 「神崎、ごめん、これ手伝ってくれない?」 「ああ、わかった。」 夏目から仕事を預かって、頭を働かす。 でも正直、今はそれ所じゃない。 どうすれば早く体の汚いのが消えるのか、とか、他の男に抱かれた俺を、また前みたいに求めてくれるのか、とか。そんなことで頭はいっぱいだ。 「神崎?何か悩んでる?」 「············」 そう言えば、夏目は以前若と関係を持っていた。それは俺だけじゃなくて、幹部全員が知ってる。 「なあ、2人きりで話したい。」 「え?うん、いいよ。」 「······昼休み」 「うん。あんまり聞かれたくない話なら、立岡さんの部屋借りようか。今日は立岡さんもいないし、誰も近付かないし。」 「ああ。」 夏目と約束をして、さっさと午前中の仕事を終わらせる。 まずどこから話せばいいんだろう。秀と付き合った事、父親に拉致られた事、そのせいで秀と別れた事、またよりを戻した事、色々ありすぎて頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。 「······終わったぁ」 「お疲れ。お昼ご飯何食べる?カップラーメンあるけど。」 「食べる。」 「うん。ご飯食べながら話そう。」 お湯を入れて、3分待つ間に立岡の部屋にお邪魔させてもらった。 「でも嬉しいなぁ。俺に話してくれるなんて。いつもなら立岡さんに話すでしょ?」 「ああ。でもお前に話すのが今は1番だと思って。······話っていうのは、冴島の事で······。」 「あ、そう言えば前にお前が熱出した時冴島さんから連絡があってビックリしたよ。仲良かったんだね?喧嘩でもした?」 「そうじゃないけど······」 話すのにこんなに勇気がいるとは思わなかった。3分を知らせるタイマーが鳴って、カップラーメンの蓋をペリペリと剥す。

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