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第165話

「悪い顔してるぞ」 「え?」 「······どうせカラスのこと考えてたんだろ。俺がされたこと思い出して怒ってる。」 「何でわかったの?」 「なんとなく」 俺に凭れて小さく息を吐いた彩葉。「煙草吸いたい」と言ってテーブルを指さす。そこには彩葉の煙草が置いてあった。けれどそれに気付かないふりをしてその指を掴んだ。 「煙草は外出て貰わないと吸えません。」 「······ケチ」 「ケチじゃないよ。吸いたいなら吸っていいけど、外でってだけ。」 「動きたくない。お前は鬼か。」 「鬼じゃないです。」 そう言ってクスッと笑うと、舌打ちをした彩葉は勢いよくキスをしてきた。 「飴かガム」 「飴あるよ」 飴を取ってきてあげると口を開けてまっている。 「はい、あーん。」 「ん」 カラコロと口の中で飴を転がす。 そんな姿が子供っぽくて、愛しさが余計に増す。 「その事は立岡には言わないでおこう。やり方は酷いかもしれない。それだけは律の方に伝えるのもいいかもね。」 「あいつらの意志は固い。話を聞くかどうかがわからない。」 「聞かなくてもいいんだよ。直接伝えることが大切だと思う。」 「······わかってくれたらいいけど。」 立岡の為なら周りを犠牲にしてもいいと思っているように感じる。 彩葉はその犠牲にされたんだと思うと、この状況を知らない立岡にも少し腹が立つけれど、仕方が無い。 「今日は暖かいな」 「······そうだね。」 本当のことを知らせると立岡がおかしくなってしまうかもしれない。 俺には複雑な立岡を支えてやれる程の器量が無い。

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