166 / 188

第166話 神崎side

夕方頃になって、1回家に帰ることにした。何故か着いてくるとうるさい秀を助手席に乗せ、家まで帰る。 「今日は彩葉の家に泊まるんだ。」 「いいって言ってないけどな」 「でも泊めてくれるんでしょ?」 調子に乗り始めた。ちゃんと躾をしないといけないな。 とはいっても、俺の事を愛してくれているし、勿論俺もそうだし、だから強くは言えない。 「······今日だけ」 「えー?ねえ、ていうかもう一緒に住もうよ。」 「それは嫌だ。」 「はっ!?何で!前まで殆ど同棲してたじゃないか!」 「それとこれとは別。俺は極道だから、万が一の事を考えたら家は別の方がいい。」 そう言うと秀は黙って、でも何かを伝えたそうに何度も俺をチラチラと見てくる。 「何だよ」 「······ねえ本当に、辞めない?」 「仕事を?だから······俺は他に何も出来ないんだよ。」 「今すぐ何か新しい事をしろって言ってるんじゃないんだ。これから生きていく中で、新しい道も探してほしいなって。」 確かにそうした方が幸せな道を辿れるのかもしれない。 でも俺は周りに散々迷惑を掛けている。それに眞宮組は温かいから、あの場所から離れたいと思わない。 「······恩がある。そう簡単に辞めれない。」 「そう······」 「こう見えても幹部だからな。俺が辞めると残されたメンバーが大変だ。」 「うん、無理にとは言わない。ただ考えて欲しかっただけ。······ごめんね。」 そういう話をされると普通はウザったく感じるんだろうけど、俺は嬉しかった。 俺の為を思っての発言だってわかるから、できることなら今すぐ何もかもを手放して2人でどこかに行くのもいいと思う。 「彩葉、青だよ。」 「あ、うん。」 でも、そんな思い切った行動を取るには、なかなか勇気がいる。

ともだちにシェアしよう!