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第173話 神崎side
本家に着いて幹部室に行くとそこには相馬しか居なかった。
速水と夏目は梓さんの護衛らしく、帰ってくるのは夕方になる前くらいらしい。
昨日休んだ分の仕事と今日の分を終わらせて、親父に報告しに行って幹部室に戻ったのは午後4時。
そろそろ帰ってくるかなと思っていると、「疲れた······」と言いながら速水が幹部室にやって来た。
「おかえり」
「······煙草」
「寝ながら吸うなよ」
ソファーに寝転んでそのまま煙草を口に咥えたから、注意するとゆっくりと体を起こして、それから火を点けた。
「あ、神崎、お疲れ様。」
「おかえり。昨日は悪かった。」
「いいえ。その様子だと元に戻ったみたいだね。」
遅れてやってきた夏目。疲れ切ってる速水を見て「情けないなぁ」と文句を言っている。
「あ、若の家に冴島さんが居たよ。何か話してたみたい。喧嘩したら慰めてとか言ってたけど。」
「秀が?」
「うん。お前と喧嘩する予定なのかな?」
「······そんな予定は無い。」
そもそも秀が今日若の家にお邪魔するって事も聞いていなかった。
少し胸がモヤモヤとする。
「俺達が帰る前に帰ったよ。」
「······そうか。」
「あ、ごめん。言わない方が良かった?」
「いや、別に。」
若と秀の間では何も無いことは理解してる。でも何の話をしていたのかがすごく気になった。
それも秀とは同居の話になったばかりだ。仕事を辞めて······なんてことも言われたし、もしかしてその件について直接若と話したのかもしれない。
「夏目、俺の今日の仕事は終わった。」
「え?あ、うん。お疲れ様。」
「帰る。」
「帰るの!?いや、終わったからいいのか······。うん、わかった。」
荷物を纏めて急いで本家から出る。
秀に何を話したのか教えてもらわないと。
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