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第178話

「だから、ある程度融通は利くけど、幹部と若か親父の了承は得ないといけないぞ。」 「はい」 幹部の仕事の話をしていると、「おはよ」と夏目がやって来てダルそうにソファーに座った。 「······あれ、何で西谷いるの?」 「俺が引退するから、引継ぎ。」 「は?引退?極道に引退とかあるの?」 「さあ?でももう辞める。」 そう言うと夏目はただでさえ大きな目を見開いて、詰め寄ってきた。 「辞めるって何?何で!お前が辞めたらうちの幹部は成り立たないよ!?」 「だから西谷が居るんだろ。」 「俺っち頑張りまっすー!」 「こんなの使えないよぉ!」 夏目がそう言ってそばにいた速水に駆け寄る。 「なっ!無理だよなぁ!」 「何とかなるだろ。お前が頑張れば。」 「俺······?相馬じゃなくて?」 「あいつには無理だろ。」 項垂れる夏目を横目で見ながら、引継ぎ作業を続ける。西谷は真剣に話を聞いてくれるから助かる。 「じゃあ後は······特にねえな。」 「無いんスか?じゃあもう暇ですねぇ。」 「暇じゃねえ、仕事を覚えろ。」 でも、真面目ではない。 それは少し困る。 この先どうなるんだろうとか、俺はどうして辞めないといけないのかとか、そんな不安を抱えながら、その日1日の仕事をやっとの思いで終わらせた。

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