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第183話 神崎side
それからの一週間は地獄のようだった。
西谷は仕事をなんとか覚えてくれて、俺もついに明日が組に顔を出す最後の日になった。
「よく頑張ったね。」
「······まあ、そうだな。」
「お疲れ様。まだ明日が残ってるけど」
「ああ。明日で全部終わるんだな。」
考えたら寂しくなってくる。
胸がソワソワして、その気持ちが秀に伝わったのか苦笑を零した。
「新しい生活が始まるんだよ。寂しくないよ。」
「うん」
「何かしたいこと見つけていこうね。」
その言葉に頷いて、目の前に並ぶ食事を食べる。
「お酒飲む?」
「ううん、今日は要らない。」
「そう」
最後の日って緊張する。
明日もいい日になればいい。そう思いながらご飯を平らげた。
***
「行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」
最終日。家を出て車に乗り組に向かう。
ああ、今日でこれも最後なのか。いつもの日常がこれで終わるんだな。
組の門をくくって車を部下に預ける。
「神崎さん!おはようございます!」
「ああ、おはよう。」
部下と挨拶を交わして幹部室に行く。
そこにはもう全員がいて珍しくて驚いた。
「早いな」
「皆徹夜。昨日夜に立岡さんが仕事持ってきたの。」
「へえ」
「それがなかなか終わんなくてさ。相馬はもう死んだ」
夏目がそう言って相馬を指さす。確かに、天井を仰いで何かブツブツと呟いている。
「西谷は?」
「親父と話してるよ。お前今日で最後だろ?荷物片付けろ」
「わかってる」
自分のデスクに行き荷物を片付ける。今日はこれが終われば親父と若に挨拶をして帰る。
「お前がいなくなるの寂しいなぁ」
「······そうか」
夏目が嬉しいことを言ってくれる。その気持ちを隠して、俯きながら口元が少し緩むとを堪えた。
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