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第186話 魔性の男

「はぁ」と深く溜息を吐く。 時刻は午前零時。そろそろ眠たくなってきた。 仕事を終えてあくびを零しながら部下の運転する車に乗り、自宅に向かう。 家に着いたのはそれから三十分後。静かに鍵とドアを開けて中に入る。 暗い廊下を歩きリビングに行くとそこももう真っ暗で、さすがに寝てるか……と少しだけ寂しく思いながら部屋の電気をつけソファーに深く腰かけた。 「つかれた」 風呂に入る気にもなれなくて、そのまま目を閉じる。 少しだけ眠ろう。それからシャワーを浴びればいい。 ーーそのつもりだったのに、ハッとして飛び起きた時にはもう六時になる頃だった。 「あ、彩葉おはよう!」 「……おはよ」 掛けられていたブランケットがバサッと床に落ちる。 キッチンの方を向けば秀がいて、コーヒーを入れているらしくいい香りがした。 「昨日帰ってくるの遅かったんだね。どうする?先にお風呂入る?それともご飯?」 「……」 「あれ、彩葉?」 「……風呂入る。これ、ありがとう。」 「いえいえ」 立ち上がって風呂場に向かう。 その前にキッチンに寄って秀に擦り寄った。 後ろから抱きついて首筋にキスをすると、よしよしと髪を撫でられる。 「どうしたの?」 「……」 「甘えたいの?」 「……うるさい」 「素直に言えたら甘やかしてあげるのに」 そう言われてグッと黙ってから、ボソッと「甘やかして」と呟くように言ってみた。 「勿論。今日、仕事は?」 「休み」 「じゃあ、一緒にお風呂入ろっか。」 「うん」 離れると、振り返った秀がキスをしてくる。 気持ちよくて目を閉じると、だんだんと深くなって少し息苦しくなった。 「んっ、お、終わり、後で……」 「うん。後でね。着替えは……要らないか。よし。入ろう」 「え、着替えは要る」 「いや、そのままセックスするから。」 「は?」 「入ろうね」 上手いこと流されてしまって、そのまま風呂場に着き服を脱がされた。

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