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第4話

「え、口で吸うの? まじか、お前じゃあ超絶テク持ってるとか?」  一郎がいつも誰かの股間にうずくまっている理由を尋ねると、彼は精気を口から摂取しているのだと言った。  それただ飲んでるだけじゃねえの、と陸夫は思う。  何はともあれ、興味がある。相手が気絶するほどのテクニックとはいかほどか。 「やってみろよ。飲んでいいからさ」  にやにやしながら言うと、一郎は目を輝かせた。  なんだこいつ。腹減ってたのか?  ベッドに腰掛けている陸夫の足元にひざまずいて、特に恥じらいもなくベルトに手をかける。それは確かに、性的なものを感じさせない動作だった。 「うは、こないだまで童貞だったじゃん。エッロいやつ」  煽ってみたが、気にした様子はなかった。そして、何をするにも真面目な顔だ。笑いをこらえながら、口に含もうとする一郎の頭を撫でた。むしゃぶりつくようにくわえた一郎が、舌を一生懸命動かす様は一見の価値がある。 「ふは、まじかよ。その顔やべー」  まだ余裕がある陸夫は可笑しくてたまらなかった。  この純粋そうな顔でしゃぶられると、確かにリピーターになりたくもなるなと納得する。何度か同じ人間の相手をしているのを見ていた。陸夫は笑いながら一郎の頭をもう一度撫でた。  しかし。  それはもう、なんというか、上手いとしか形容のしようがない。陸夫は先程の余裕もなくして一郎の頭を押さえつける。 「あ、そこ、もうちょっと……」  荒い息を吐きながら、涙のにじんだ目で一郎を見下ろした。  すると、くわえたまま一郎が顔を上げた。 「うん。気持ちいい?」  ぞくっと来た。  やべえ。これまじのやつだ。  本当は少し馬鹿にしていた。悪魔だといっているのだ。何か得体のしれない力が働いて、そのせいで刺激が強いのだとばかり思っていた。それはそうなのだが、それだけではない。まさかここまでとは。 「あは、……はっ……ちょ、やっべ」  少し前かがみになり、一郎の髪を引っ張った。このさらさらの黒い髪に顔をうずめたい。ぶるりと体を震わせて天を仰ぐ。強引に頭を引っ張りたくてたまらないが、そこは陸夫のプライドが許さなかった。 「も、出る、離し……あ、飲む……のか」  一郎の喉の奥に熱い液体が流れ込むと同時に、彼の翼がばさりと姿を現した。何度か羽ばたき、ごくごくと一郎が精液を飲み込んでいる。小さいツノも半分出ている。 「うは、羽出ちゃうのか」  どういうメカニズムなのかはわからないが、いつも翼を出して目立っているのはこのせいか。そっと翼に手をやると、ばさりとまた羽を撒き散らした。  ごくりと全てを飲みくだし、何度かちゅうちゅうと吸うと、先をぺろりと舐める。 「一郎ちゃんかーわいい」  息をあらげながら頭をなでると、一郎は顔を上げて陸夫を見、面映そうに笑みをこぼした。    こいつ笑うのか。  ぞっとした。  初めて見せた一郎の笑顔が、ピシリと陸夫の何かにひびを入れた。しかし、陸夫の周りを覆っているものは多すぎて、どこが傷ついたのかわからない。  陸夫はその思考を笑い飛ばす。  わからないのなら考えなければいい。  くだらないことを言っていればいい。 「なあそれ美味いの?」 「……うーん……」  首をかしげ、なんとも言えない顔をする。一郎の返事に陸夫はふきだした。 「ぶは、そこは美味いって言っとけよ」

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