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第6話
一郎はソファに座って本を読んでいる陸夫の顔をぐきりと横向かせ、唇を押し当てた。
「いってえな。なんだよ。こっからも吸えるの?」
一郎はカッと顔を真っ赤にしてうつむく。シャツの裾をぎゅっと掴んで、じわじわとこみ上げる恥ずかしさに耐えていた。なんだかとんでもないことをしてしまった気がする。少し泣きそうになりながら声を上げた。
「したいからしたんだよ!」
陸夫は、ん? と思った。ずいぶん積極的だ。今まで自分から何かを仕掛けてくることはなかった。どういうつもりなのかはわからないが、面白い。にやにや笑って一郎の顎をつかんだ。
「じゃあもっとしてやるよ」
深く唇を合わせると、舌を差し込む。びくりと震えた一郎をソファに押さえつけ、さらに深く角度を変えた。
「んん」
「こういうのも人間と同じなのか?」
はあ、と息を吐きながら陸夫は唇を舐める。もう一度口づけると、一郎の手が震えながら陸夫の肩をつかんだ。
「ん……ふっ……ちが……」
「うはは。これも初めてかよ。かわいいな、お前」
ぎゅっとさらに唇を押し付ける。一郎はびくりと跳ねた。
「んっ」
だらりと腕がたれて、一郎はソファの背にぐったりと倒れこんだ。陸夫は体を離し、気を失ってしまった一郎を見下ろす。
「まじかよ。こいつキスだけで飛んじまいやがった」
はあ、とため息をつく。ベッドまで運び、寝かせると、髪をすくった。
こういうのって我慢できるようになるんだろうか。
一抹の不安を覚える。このままでは陸夫はずっと欲求不満だ。
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