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第9-2話

「普通に触っても勃起するからツノを舐めるのをやめてくれないか」  冷静なのか余裕がないのかわからない声音で、一郎は陸夫に言った。 「ん……あ? そう……? でもそれ、今言うことじゃ、ない……からっ」  はあとため息をつくと陸夫は一郎の腹を撫でた。 「あは……、全部入った……っ……」  陸夫がとろりとした笑顔を向けると、一郎の体がびくりと跳ねた。それを強引にベッドに押し付ける。  こいつは言葉に弱いな。 「ちょっと待て。ちょっと待てよ。いったん落ち着け」  ずしりと腰を一郎の上に乗せたまま、陸夫は動きを止める。再びため息をもらすと、少し歪んでいる一郎の顔を見た。 「んで? なによ。口でして欲しいって言ってんの?」 「そ……じゃなく、て」 「おいおい。さすがに言葉だけでイクんじゃねーぞ」  その言葉に、一郎も深くため息をつくと呼吸を整えた。 「ツノは刺激が強すぎるんだ。だからすぐに」 「ふうん。じゃあ次そうしようなっ。っは……」  陸夫が急に動き出し、一郎は慌てる。腕をつかむが容赦なく体を上下させられて、陸夫が甘いため息を再び吐き出した。  一郎は唇をかみしめて耐えるが、長くは持ちそうにない。いつものことだ。本当に、こればかりはなにをどうすればいいのかわからない。 「ちょ、ま、……」 「あは、一郎ちゃんかわいいねえ……」  陸夫が体を前に倒して唇を舐めると、びくりと大きく一郎の体がしなった。陸夫は腰を止めてため息をつく。 「はあ、まあ、予想の範囲内だな。よし、じゃあ次ね。ほんとに俺で勃つのか?」  ゆるゆるとしごかれて、一郎の息が荒くなっていく。陸夫が、ぎゅっとシーツをつかんでいる一郎の手に触れた。手を持ち上げて唇を押し当てると、さらに彼のものが起き上がる。 「ふは、ほんとだ。ちゃんと勃つじゃん」  陸夫が笑いながらふっと息をかけると、一郎はどくりと脈打って精を放った。 「…………顔射かよ」 「だって、それは……っ」 「どの口がツノのせいだっていったんだ、よっ」  ぐにぐにと片手で頬を締めあげられ、一郎は呻いた。ぎりぎりと力を強める陸夫の手首を握る。何か言い訳をしようとしているが、陸夫は聞く耳をもたなかった。 「はあ、まじで俺いつイケんの……」  深いため息とともに言葉が吐き出される。一郎は一瞬眉をひそめ、悲しそうな表情を浮かべた。陸夫はそれに気づかない。 「んじゃま、もう一回ね。締めるからねー」  ごそごそと先日手に入れた根元を締めるリングを取り付ける。 これで長持ちするらしい。本当かよ。 「え!? ちょっと、いた、痛い……!」 「はいこれで大丈夫っと」  陸夫はまたごしごしと一郎のものをこする。案外すぐ勃つ。入っただけで果ててしまうのだ。当たり前か。 「んふふ……一郎ちゃんおっきいから好きよ」  はあ、と甘いため息を吐きながら根元まで入れてしまう。  一郎が何か叫んでいるが、今日の陸夫は余裕がなかった。  もうずっと中途半端なまま終わってしまっているのだ。さすがに我慢の限界だ。  徐々に高まる快感に周りの音が遠くなっていく。 「……ん、もうちょっと……」  目の前に薄く遠く真っ白な光が見えそうになった時、今まで跳ねていた一郎の体がベッドに沈んで動かなくなった。 「おいおい、まじかよー。出せないと飛ぶのか……当たり前か……」  ずるりと引き抜いて一郎の上から降りる。締め上げていた根元のものを外すととぷとぷと少し精液が流れ出た。 「うわっ、なんだこれ、超痛そうじゃねーか。サイズ間違えたか……」  一郎の顔を見ると、涙と鼻水とよだれでぐちゃぐちゃになっていた。 「あー……やり過ぎちまった」  頭をがりがりとかきむしりながらタオルを取りに行く。顔を軽くこすって拭いてやると、むっと一瞬眉間にしわを寄せて、また元に戻った。 「かわいいなー。こいつ」  それだけで少し和む。結構酷いことをしているので、和んでいる場合ではないが。 残っていた涙をぺろりと舐める。少ししょっぱい。  こいつ羽とツノ以外どこが人間と違うんだろう。  サラサラと髪をかき分けて、ツノのある場所を探るが、痕跡は見つからなかった。顔を拭っていると、少し開いた口の中に小さなキバが見える。グイと押すが、小さ過ぎて人間の犬歯とかわらないし痛くも無い。苦笑して指を離すが、口は開いたままだった。  ぶふ、とふきだしながら頭を撫でる。  こいつ子供みてえ。

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