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彼は1年の中ではわりと有名な奴で、まあ人気があると言う訳ではなく、彼の友人が飛び抜けて顔のいい奴なので一緒にいるそいつに嫉妬の火の粉が舞っているという状態だった。
なんとくだらないことか。男しか居ない学校なのに、そのような醜い嫉妬をして本当にくだらない。僕はどちらかというとこの目の前で米の研ぎ方に悪戦苦闘している彼の方に肩入れをしている。
だけど、彼の掃除の仕方や、料理のやり方は気に入らなかった。
「おー白鳥くん。おかえり。…いやぁ、米なんて研いだことねーからさ、とりあえず調べてみてるとこで」
「その右手の洗剤はなんだ」
「あっ、あ、これは!違うぞ!洗剤は違うよなって思って今調べてたとこだから!」
慌てたように洗剤を元あった場所に戻して、顔を赤くする同室者。こいつ、洗剤で米を洗おうとしてたのか…?
あの時は心底ゾッとして、ずり落ちそうになる眼鏡を押し上げたのをよく覚えてる。
そのあと米の研ぎ方を教えてやった。包丁の握り方や、味噌汁の作り方。ひと通りの料理の基礎を叩き込んだ。
「お前ほんとすげーよな。なんでも知ってんだもん」
「別になんでも知ってる訳じゃない。こんなの基礎中の基礎だ。米を洗剤で洗おうとしてた君が異常なだけだ」
「…ソレまだ言うのね。何度も言うけどあれは本気で洗おうとしてたわけじゃねえんだって」
ぶつぶつと床の拭き掃除をしながら、同室者が僕に背を向ける。…あ
「そこ!角まで拭け!」
「!?…っくりした!なに、角!?」
「そうだ。四角い所はきちんと四角く拭け。じゃないと掃除したとは言えないだろう!」
キツイ口調で言ってしまったが、同室者は僕の指差した角を見て「あ~」と納得したように頷き、言われた通り雑巾で拭く。
「そうだよな、言われてみたら確かに俺も気になるわ。今度から気をつける」
素直な反応で床を拭きながら気持ちのいい笑顔で笑いかけられて、こちらも晴れ晴れとした気分に変わる。
ふむ。いい奴だな、こいつ。
そして、その後も同室者は僕の言うことを素直に家事に取り入れてくれて、学年が上がる直前にはわりとストレスフリーな生活が送れるようになっていたのだ。
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