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その日は1年生最後の寮生活だった。 明日から春休みという長期休暇で僕は実家に帰る予定で、この部屋で過ごすのも最後。 最後に同室者が帰ってきたら煮物の作り方でも教えてやろう、と冷蔵庫を開けていると鍵を開ける音がして彼が帰ってきた。 「おかえり末永…、と」 「ただいまー。今日もこいつ飯食うってうるさくてさ、最後の最後までごめんな」 「やほ~、お邪魔しまぁす」 同室者と一緒に入ってきたのは何かと話題に事欠かない同室者の友人だった。 何度見ても慣れない爽やかで整った顔立ちに甘ったるい雰囲気。初めの頃は恋人がコロコロ変わるという軽い男のイメージしかなく、そんな男が何故か同室者とは小学生からの親友というから不思議でたまらなかった。 同室者も見た目が地味な訳ではないが、派手なわけでもなく、友人と比べるとだいぶ系統が違う。 それなのに2人は今でも仲が良く、友人の方がこうしてよくこの部屋に遊びに来るのだ。それもまあまあな高頻度で。 最初はただでさえ部屋が狭いのになんて思っていたが話をしてみると案外話しやすいし、悪い奴ではない。 今日も一緒にご飯を食べるらしく、相変わらず仲がいいことだと密かに思う。 「智ちゃん今日何作るの~?」 「あー、どうしよ。冷蔵庫の野菜使い切りたいんだけど、律なんか食いたいもんある?」 「肉じゃが!」 「却下」 「なんでー!?食いたいもんあるって智ちゃんが聞いてきたくせに!野菜使い切れるし一石二鳥じゃん」 「肉じゃが作り方知らねーもん」 纏わりつく友人を鬱陶しそうに振り払う同室者に、「肉じゃがなら作り方教えるぞ?」と気付けば提案をしていた。 それに対して2人同時に顔をこちらに向けるものだから、可笑しくて僕は自然と笑ってしまった。

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