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「!、末な…」 こんなことってあるのか!寮を飛び出してきて良かった、と頬が緩みそうになったが、その横に誰かいる事に気付いて足を止める。 あの華やかで得体の知れない友人かと思ったがそうじゃない。見たこともない生徒だ。 然程身長が高いようには思えないが、綺麗な蜂蜜色の髪に、見惚れるような美しい横顔。まるでフランス人形のように繊細な造形だ。 元同室者の友人のように華やかな風貌ではあるが、どこか触れると壊れてしまいそうな儚さも感じる。 一瞬女性かと思ったが、ここは男子校だ。女性がいるわけがない。 誰かと居るなら話しかけるのはやめておこう。そう思うのに2人の距離が嫌に近く見えてしまい、どうしても目が離せない。彼らは体育館の入り口に立ち、見つめあっているような甘い雰囲気を醸し出して居る。 目を奪われるように見ていると、色白のスラリと伸びた腕が優しく元同室者の頬に触れた。 「っ…」 僕は思わず踵を返して元来た道を歩き出す。盗み見てるみたいで急に恥ずかしくなったのだ。 …恋人、だろうか。 1年の時はあんなに男同士はあり得ないと言っていたのに、いつの間にそちら側の仲間入りをしたんだろう。 それにしても随分と綺麗な男だった。確かに僕もあそこまで次元が違うとアリかも知れないと思うが、…なんにせよ驚きである。 だけど。 だけど、とどうしても引っ掛かる。 彼にそんな大切な相手が出来ることを、あの友人は何も言わなかったのだろうか。 と。 あの男はよく分からない。いつも飄々としていて余裕があって、爽やかな笑顔を浮かべて常に誰かと付き合っている。 そして元同室者とは気の合うただの親友。それが僕の中での認識だ。 でもあの時。 僕達を見ていた彼の視線は、確かに―― いや、僕はそれの名前をなんと呼ぶのか知らない。 知らない方がいい、と誰かが笑った気がした。 end.

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