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律のお誕生日

「おかえり。なあ、お前はなんかあげんの?」 7月13日の夕方。 日にちが迫りどうしようかと頭を悩ませていた俺の元へ、部活終わりの織田が帰宅してきた。 「誰に」 「律に決まってんだろ。明日だぞ、誕生日」 「明日?へえ。聞いてない」 「聞いてない!?なら今聞いたってことで祝ってやれよ。律も大好きな織田に祝われたいだろうしさあ。……つかお前ら普段ラブラブなのにたまに冷めたとこあるのなんなの?」 「アンタはなにすんの?」 疑問を投げ掛けたはずだが、普通に無視された。 大丈夫。こんなのは慣れっこだ。なんなら会話が続いただけマシだ。ほんと俺可哀想。 「いや、それを迷ってんだよなあ。こうも毎年一緒に居るとネタがだんだん尽きてきてだな…なのに毎年律からのプレゼントはセンスが良くて負けられないっていうか」 「くだらな」 織田は言葉通り心底くだらないという顔を向けてくる。 俺の数日間の悩みをくだらないですって!聞きました?奥さん。 「そんな風に言うなら織田はなにがいいと思うんだよ!さぞかし律の喜ぶ案が浮かんでんだろうな?」 「あー……じゃあ抱き締めて笑顔でオメデトウとか。そもそも俺まだ律の好きなもん知らねえし、いらないもの貰うよりいいだろ」 「!? そ、そんなの…そんなんで律に喜んで貰えるのはお前だけだからな…!?俺がそんなことした日にゃ風邪引いたの?とか言われてご丁寧に熱まで測ろうとしてくるオチまで見えるわ。顔の良いお前に聞いた俺が馬鹿だった…」 「いや冗談に決まってんだろ。いい歳して誰が誕生日に抱き付かれただけで喜ぶんだよ。つかアンタは俺に抱き締められて喜ぶわけ?」 「え?…あ。違う違う。さっきのは違う。顔がいい以外なしなし」 「試してみるか。自分の発言にしっかり責任持てない奴はロクな大人になれないって」 「そんな重い話してた!?…待て。近付いてくるな!だから無駄に距離が近いっつの!ソ、ソーシャルディスタンス!」 親友の誕生日について話をしていた筈が、気付けば親友の恋人に顔が良いと褒めてるだけの時間になってしまった。

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