2 / 20
Ⅰ章 在りし日の歌①
神の住む天界 高天原
俺は高天原大学に通う三年生
就活は必要ない。
就活は下賤の神が行うものだ。
首席で卒業すれば下界 葦原中国の国産みをする栄誉が与えられる。
高天原大学きっての秀才と称される『神世七代』の俺からすれば、首席など造作もない事。
しかしっ!
「精液をどうやって調達すればいい?」
種のない精液では分析できない。
このままでは『不可』がついてしまう。
となれば首席の座も危うい。
レポートの提出期限は明日
アァ、学食のカレーと揚げ出し豆府
俺的最強コンビの大好物の味すら分からない。
ソースをかけるがダメだ。
……あっ、揚げ出し豆府にかけてしまった♠
ネット通販にもない。
オークションの出品もない。
極秘裏に入手しなければ。
「精液はどこにある?」
「俺ので良ければ、差し上げましょうか」
ポンッ
背後から肩を叩かれて……
「先輩」
振り返った視線の先
柔らかな栗色の髪と、菫 色の瞳の青年がいた。
…………誰、だ?
俺を『先輩』と呼んだけれど、俺は彼を知らない。
「ねっ♪」
ぎゅっと握った手
ガタン
椅子を倒して、引っ張っていく。
おいっ、どこに連れてくんだァっ?
ともだちにシェアしよう!