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Ⅰ章 在りし日の歌③
「ナミっちは、すげーな!」
「……ウイ。その呼び方はやめろ」
「何て呼んだらいいんだよ?」
「イザナミ」
「じゃあ、ナミ」
結局、略称か。
きちんと呼ぶ気ないな、こいつ。
「分析、完璧だな」
「まぁな」
俺にかかれば精液分析など容易い。
課題レポートの『優』は決定だ。
「……にしても、ナミは成分も凄いのな」
「えっ」
「精子の数も運動率もα並だもんな」
「……そうなのか?」
「あぁ、感動した」
うるうる、と目を潤ませる親友
αはβよりも生殖能力に秀でているというが。精液は神を感動させる物らしい。
「つー訳で、俺と体液交換しねー?」
「はい~?」
おい!話が繋がってないぞ。
さっきの感動は何?嘘かっ。
「お前の精液分析したいし、お前も俺の精液研究してみねー?」
種のない俺にとって、βであるウイの精液は興味深い。
だが!
それだけはダメだ。絶対に!
レポートの精液は俺のじゃない。
あの精液は、見知らぬ後輩の……
「決まりな!放課後、俺ん家集合」
「行くとは何もっ」
「それとも、今から採取するか」
「……厠か」
「分かってるねー。大人だねぇ、ナミは」
そうじゃない!
あの精液も厠で採取したから。
「ナミの、俺がいっぱい採取してやるからな」
「えっ、あのっ」
「俺のはナミが採取してくれな」
だからっ!
マズイ。非常にマズイんだーっ!
ぎゅっ
気づけば手を繋がれている。それもなぜか恋人繋ぎで。
「ウイ!」
………あれ?
手が離れたのは、どうしてだ?
腰に腕が回されている。
背後から……
「俺、ナミ先輩と約束してるんで」
有無を言わさぬ、菫の玲瓏
言葉は丁寧なのに。
なぜか?
背筋に冷たいものが走った。
「先輩お借りしますね」
お前はっ
精液の後輩!!
しっ……と、人差し指が唇を掠めた。
「あなたから、まだ報酬を頂いてませんので」
「報酬?」
「そう」
熱い吐息が耳元で、クスリと笑った。
「精液の報酬」
俺はあなたに精液を提供した。
あなたは、俺に……
「俺の子を提供してください」
ええぇぇェェェーッ!!
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