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第4話

今月に入って気温がグンと上がった。空調の効いているオフィスとはいえ、窓から容赦なく日差しが侵入して室温を上げている。 ほんの少し忙しくなって室内を移動していると、ジワジワと汗が吹き出て仕事を妨げてくる。これだから。夏は嫌いだ。 相変わらず依頼メールを受信し続けるPC画面に、イライラがピークに達して席を立った。 午後からは関係会社との会議、その後に本社提出用に月初報告書をまとめて、それでその後は…。 だめだ。一回やめよ。 あからさまにイラついて立ち上がった俺に、後輩が苦笑いしながらどうぞ、とドアを指した。 オフィスを出たフロアの突き当たりにある喫煙室までぐんぐん歩く。ガラスの引戸を抜けると灰皿が3つ。 はあ。疲れた。まだ昼の11時だけどもう既に残業確定か。昇進するたびに思うけど、この会社は責任と仕事量が給料に見合ってないよな。今月何時間残業したっけ。 「帰りてえ…」 思わず独り言。 指先で箱を叩いてそれを一本咥える。火を点けるのとほぼ同時にスマホの液晶を撫でると、友人からのメッセージの他に、1時間ほど前に、雪弥からのメッセージを受信していた。 すうっと肺を満たしながら、暑さに眩んだ頭が冷静になっていくのを感じる。 最後に会ったのは、先週の水曜日か。 行為中に雪弥の携帯が鳴ってて、いつもは泊まっていくところを夜中に帰っていった。 フロアは同じだけど部署が違うからもともと社内では会話が無いし、顔は合わせるけど話はしない。 さっき席を立つ時にチラッと伺った愛しい横顔は、ちょっとイラついた様子で電話をしてた。 『明日早めに終わりそうなんですが、蓮さんお忙しいですか?』 いつもの簡潔な内容のメッセージは、自分の明日のスケジュールが空いていることと、俺の明日の予定を伺う2文のみだ。 ふう。と煙を吐き出して明日のおおよその退社時間を返信、スマホのスケジュール管理を開いた。何気なく週間の予定を確認していると、ふと浅はかな期待に繋がる要因を見つけてしまった。 あれ、明日って、金曜。 ほんと単純。こんな事で心がほぐれる。 (金曜は彼女の日、なんじゃないの?)

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