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愛は見返りを求めないなんて理想論
「蓮さん腕枕して」
「やだ」
情事後のベッドの中。
電気を消してからも寝付けないのか、もぞもぞと動き出した雪弥が頬杖をついて、さっきからずっと腕枕をねだってくる。
なんだよ、だだっ子かよ。
さっきまであんな鬼畜な顔して俺のこと虐めてたくせに。
毒が抜け切ったみたいな顔して甘えてくる雪弥はなかなか腕枕を諦めない。俺の腕を引っ張って鎖骨あたりに頭を乗せてきた。
「蓮さんいい匂い」
「重い。俺このまんまじゃ寝れない」
「蓮さんって彼女にも腕枕とかしてなかったんですか?」
「んー、まあ、そんな事はないけど…」
言ってから、あ、まずいって思ったけどもう遅かった。
がばっと起き上がった雪弥が俺の胸に顔を埋めてなんでなんでなんでなんでって。
こっちが聞きたいよ、なんで今日そんなだだっ子なの。
「女にはするのに俺はだめ」
「ダメとかじゃなくて」
「じゃあなんですか」
「あーもう。ほら、来いよ」
そう言って腕を広げれば物言いたげな顔しながらもすっぽり収まる雪弥。
そういえばこないだソファで咥えられた時も女がどうとか言ってたな。
そんな気になる?俺の元カノ事情。
確かに今は雪弥に鳴かされてるけど、俺だって一応、男として機能してたんだよ。
「蓮さんってどんな子が好きなんですか?」
「それ聞いて何になんだよ」
「気になります」
特に好きなタイプはないけど、強いて言えば欲しがる女は苦手。
私はこれだけやってあげたとか、あなたの為にこんなに、とか。
そうやって主観を押し付けてくる奴は無理。
「あー、なんか、蓮さんぽい」
「満足か」
自分が有利になるための見返りを求める奴は、結局は自分が可愛いだけなんだなって思う。
人間ってそんなもんかな、なんて、大人になって割り切ったこともあったけど。
「俺は蓮さんの愛があればいいです」
与えるとはまた違う感覚。
伝えたくて仕方なかった溢れる愛を全て受け取ってくれる。雪弥が喜ぶなら、俺はいくらでも愛していられるな、なんて思った。
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