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最も忘れたくて、一番忘れたくない記憶
上司に、セフレ打診された。
年末の忘年会の後、どうしてかベロベロのまま雪崩れ込んだ自宅のベッドでは、かねてより俺に気があるんだろうなと感じていた上司が顔を赤らめてこちらを見ていた。
それから数ヶ月。
酒の勢いかと思ったその関係は、もうアルコール抜きでも成立している。
むしろ、蓮さんを抱く時に酒が入ってることって少ないんじゃない?
どちらからともなくアポを取ってどっかで飯を食ってからのこともあるし、直行で俺の家に来ることも。さすがにラブホは行ったことない。
「あっあっ、雪弥…!んうっ」
「あーもうやばいです。蓮さんもイク?」
いくら考え事をしてても、ある程度の滑りと摩擦があれば簡単に欲を吐き出す低脳なムスコが、蓮さんの体内に白濁を放った。
接合部から伝うローションをすくって蓮さんのを扱くと、同じく吐き出される白いぬめり。
胸を上下させて呼吸を整える蓮さんにベッドサイドのボックスティッシュを預けて、跨っていた体から下りると何か言いたげな蓮さんの視線が俺にまとわりつく。
それでも決して言葉にはしない蓮さん。
都合よく鳴ったスマホを持って、俺は浴室に向かった。
「あの日」の宣言通り、体の繋がり以上を求めてくることはなくて、俺はそれがモドカシイ。いや違うな、少し、イラつく。
欲しがられるのは嫌いだし、セフレの女が付き合おうとしてくるのはうざくて仕方ない。立場考えろよって。
ああほら、こいつは一応彼女だけど、こんな時間に「会いたい〜」だなんて。何で女っていつでも自分が一番なんだろう。貪欲で自己愛が強くて、そのくせ他人に依存したがる。欲しい欲しいばっかりで、自分の手は汚さない。
でも蓮さんみたいに何も言われないのもそれはそれで。
「はー。くだらねえ」
降ってくるシャワーに身を預けてる間に、遠くで玄関が閉まる音がした。
帰るの早すぎんだろ。
イッたら終わり?それで満足?
行為中にしか聞こえない「好き」も、
妙に大人ぶる寂しげな笑顔も。
そういうの、冷めるからやめてよ。
俺のこと好きなら、ちゃんと言って、ちゃんと傷付いて。
その傷口なら、俺が舐めてあげるから。
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