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無意識のゼロセンチ

**** 完結済みにしたくせに出戻りました…!! **** ばたつくオフィス。 どこかの部署が打ち合わせを終えて、負のオーラと一緒に会議室から人が溢れてきた。 今日はこのあとの会議を終えたら終わり。もうこの時点で定時は過ぎていて、それでも社内はそれなりの人数が残ってる。 今日は雪弥とご飯に行く予定だし、なんとしてでも予定通りに終わらせて退社するという強い意志がある。 モバイルPCを電源ごと引っこ抜いて、未だ紙社会から抜け出せない残念な弊社の企画書と共に会議室に入った。 今日は雪弥も一日缶詰の日で、3部構成の会議の最終コマが確か同じ時間くらいに… 「あれ、蓮さん?」 「おお、お疲れ。次ここ俺らだけど」 夜何食べようかなあなんて考えながらホワイトボードをリセットしてプロジェクターを準備していると、見知った顔が入り口でぽかんと立ち尽くしてた。 手には、ここ最近の激務の原因、新製品のサンプル。 「あー、やば。会議室バッティングしたかも」 「予約ミスった?多分隣まだ空いてると思うけど」 「まじすか。良かった〜」 そう言いながら社用スマホを操作する雪弥がなんかとんでもなく愛おしくて、無意識にその腕を掴んで扉を閉めた。 びっくりしました。って顔して目をまん丸にした雪弥が俺を見上げる。 女みたいに長いまつ毛。茶色っぽい目はちょっと充血してる。 「蓮さん?会社ですよ?」 「うん。なんか分かんないけど、こうしたくなった。いきなりごめん」 「結構お疲れですか?今日飲み行くのやめとく?」 「いや、飲みには行く。この会議も秒で終わらす」 実際、ちょっと疲れてはいるけど。 ふふって笑った雪弥が俺の頬を撫でて、なんか、強請ったみたいで気まずいな。 そう思いながらも近づいてくる慣れた香りに目を閉じて、お互い唇を寄せた瞬間、会議室の外から雪弥を呼ぶ声が聞こえて思わず2人で固まった。 くそ。タイミング悪すぎ。 「そちらの部長じゃない?だいぶキレてるけど大丈夫?」 「…いつものことなんで!じゃあまた後で!」 手元の資料やらなんやらを抱え直した雪弥が、ドアノブに手をかけながらちゅっと軽く唇を重ねて、 続きは夜にね、なんて少女漫画みたいなことを言って会議室を飛び出してった。 出た瞬間怒鳴られてたけど。 この1時間乗り切って、さっさとビール飲み行こ。

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