48 / 52

忘れられない味が、また増えちゃったね

仕事帰り。 雪弥と外でご飯を食べて、なんかゆっくり飲み直したいですねって雪弥の誘いに乗って、コンビニ経由で俺の家に行くことにした。 今日、水曜か。 月曜に雪弥が泊まった時のシャツがまだ洗濯機にあるから今から帰って乾燥機まで回せば間に合うな。 ついでに枕カバーも変えとこ。 「蓮さん、俺これやりたいです」 「なにこれ。ホットケーキ?」 酒ってなにあったっけ、なんて考えながら売り場をうろうろしていると、ぬっと目の前にポップなパッケージが出てきた。 可愛らしいクマのイラストと「お子さんと一緒に!」って吹き出しが付いてる。 目をキラキラさせた雪弥が勝手に牛乳や卵をカゴに投げ入れてきて、メイプルシロップを探しにまたどっかに行った。 え、俺、良いよとか何も言ってないんだけど。 もう割と夜遅いし結構だるいな。 「雪弥、これ週末にやろ」 「やだ」 「…おい」 こいつどんどん幼児化してる気がする。 メイプルシロップとホイップクリーム(コンビニって生クリームまであるのか)を追加した雪弥が子供みたいに舌を出して挑発してきやがる。 せっかく顔が良いんだからそういうのやめろって。 「あと適当にお酒買って帰りましょ!」 「はいはい。もう好きにしろ」 そうして着いた俺んち。 時刻は23時。 コンビニから帰ってきて2時間弱のタイムラグについてはベッドに投げられた生クリームでお察しいただければ幸いでございます。 「よーし!ホットケーキ作りますよ!」 「…いや、もうだるいって。雪弥、あれは週末にしよ。」 「今日食べたいんです!蓮さんは寝てて」 至極愛に溢れた穏やかな顔で俺の髪を撫でておでこにキスを落とした雪弥が鼻歌混じりで寝室を出てった。 いや、なんか俺を嗜めてる感あるけど。 さっきキッチンで突然サカり出したのお前だからな。せっかく作る気になってやったのに突然脱がされ生クリームかけられた俺は被害者だからな。 はあ、もう考えるのも怠い。 社用スマホをぱぱっとチェックしてベタベタの身体を洗い流してベッドに戻ると、意外と見た目が整ったホットケーキと一緒に満面の笑みの雪弥が尻尾を振って待ってた。 トッピングには遥か昔に買って忘れてたバニラアイス。 「はい、蓮さん、あーん」 「…ん。うまい」 「へへっ、でしょ?俺にもあーんしてください」 間抜けに開けた口にフォークを突っ込んで、しあわせ〜って笑う雪弥になんかいろいろ吹っ飛んだ。 「俺も幸せだよ」 …あ、洗濯忘れてたなあ。

ともだちにシェアしよう!